Song for all seas,all ships A Sea Symphony |
すべての海 すべての船に寄せる歌 海の交響曲 |
To-day a rude brief recitative, Of ships sailing the seas,each with its special flag or ship-signal, Of unnamed heroes in the ships--of waves spreading and spreading far as the eye can reach, Of dashing spray,and the winds piping and blowing, And out of these a chant for the sailors of all nations, Fitful,like a surge. Of sea-captains young or old,and the mates,and of all intrepid sailors, Of the few,very choice,taciturn,whom fate can never surprise nor death dismay. Pick'd sparingly without noise by thee old ocean,chosen by thee, Thou sea that pickest and cullest the race in time,and unitest nations, Suckled by thee,old husky nurse,embodying thee, Indomitable,untamed as thee. Flaunt out O sea your separate flags of nations! Flaunt out visible as ever the various ship-signals! But do you reserve especially for yourself and for the soul of man one flag above all the rest, A spiritual woven signal for all nations,emblem of man elate above death, Token of all brave captains and all intrepid sailors and mates, And all that went down doing their duty, Reminiscent of them,twined from all intrepid captains young or old, A pennant universal,subtly waving all time,o'er all brave sailors, All seas,all ships. |
今日 粗削りな短い朗唱を 海を航行する船らの それぞれに特別な旗または船の信号旗のついた 名もなき英雄たちの 船に乗った −−広がる波の 目が届く限り広がっている 押し寄せる飛沫の そして音を立てて吹き過ぎる風の そしてこれらの歌の中から すべての国の船乗りたちのための讃歌を ふさわしく 寄せ来る荒波のような 若いあるいは老いた船長たちの 航海士たちの そして勇敢な水夫たちの 少数の選ばれし 寡黙な その運命にも驚かず 死に面してもうろたえぬ者たちの 控えめに選び出されし 音もなくお前老いたる海に お前によって選び抜かれた お前 海よ 民族を拾い出し選び出すもの 時をかけて そして諸国を統一するものよ お前に抱かれて 老いてしゃがれた乳母よ お前を体現しながら 不屈に お前のように奔放な者たちの 翻らせよ おお海よ お前のそれぞれの諸国の旗を! 翻らせよ いつものようにはっきりと 様々な船の信号旗を! だが残しておけ 特にお前自身と人間の魂のために ひとつの旗を他のすべてよりも 精神が織りなされた信号旗 すべての国々のための 人間の紋章 死を超えた 象徴を すべての勇敢な船長たちとすべての勇敢な水夫たちと航海士たちの そしてすべての者たち 義務を果たして倒れた 彼らを思い出させる すべての勇敢な老若の船長から織りなされた旗 普遍のペナントを いつもかすかに波打つ すべての勇敢な船乗りたちの上に すべての海の すべての船の上に |
雄大な冒頭のコーラスを受けてバリトンのソロが歌い始めるのは、「草の葉」の20番目のセクション .Sea-Drift(岩波文庫の訳では「潮のまにまに」とありました。このセクションの詩はディーリアスにも曲をつけたものがあります。ここではそこから9番目の詩を取り上げ、そのタイトルを第1楽章全体のタイトルとしています。この詩の冒頭がバリトンのソロで歌い出されると、同じ歌詞はコーラスに引き継がれて非常に格調高い船乗りたちへの讃歌となります。1節目の最後の2行目のところでバリトンソロが戻ってきてコーラスと野掛け合いとなり、しっとりと重たい曲想となります。
引き続いて次の節ではソプラノソロが入ってきて原詩の後半部分をコーラスと掛け合いながら優美に、そして格調高く歌います。ここのコーラスが次第に力強く盛り上がって行く部分は絶妙。最後の2行はバリトンとソプラノのソロがまた入って来てコーラスと共に格調高く音楽を締めます。
( 2020.07.20 藤井宏行 )