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アカシアの花    
 
 
    

詩: 松坂直美 (Matsuzaka Naomi,1910-2002) 日本
      

曲: 橋本國彦 (Hashimoto Kunihiko,1904-1949) 日本   歌詞言語: 日本語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください


40代の半ばで肺病のために亡くなってしまった橋本の最後の作品(1948)。ラジオ歌謡のために書かれた曲ということで、初演は高木清の歌でしたが、「高原列車は行く」の岡本敦郎がレパートリーにしていたようです。残念ながらまだ彼の歌は聴けていませんが、そんな感じの清潔感溢れるシャンソン風の歌です。
冒頭の暗い曲調が絶妙の転調で輝かしく締められるところなどは実に巧い。そして彼の白鳥の歌であることを知らなかったとしても、心にじんと染み入ってくるような素敵なメロディです。
昭和の初めには「芸術歌曲」をたくさん書いていた彼も、昭和12年にヨーロッパ留学から戻ってからは時局に合わせた音楽ばかりを書くように(書かされるように?)なり、そして敗戦後はそんな音楽がもとで芸大の教授職を追われ、まさにポピュラー音楽のソングライターのようになってしまう(けっしてポピュラーソングのライターを貶めているわけではありませんが、当人の望んでいたキャリアであったのかというとそうではなかったように思えます)。
なんだか私にはスターリン下の「社会主義リアリズム批判」で作曲活動から干され、映画音楽や劇音楽の分野に活路を求めなければならなかったショスタコーヴィチやプロコフィエフの姿が重なり合います。戦時中が暗い時代だと良く言われますが、戦後でもこんなことが人の世ですからあるのですね。そしてそれは現在でもきっと...
作詩の松坂直美は長崎の出身で、歌謡曲の作詞の他にもけっこうクラシック作品の訳詞をされておられるようで、ネットを探してもシューベルトの歌曲の訳詞などがあるという情報が得られました。そういった訳詞そのものはまだ見ておりませんけれど、そういう接点があるのは面白いですね。
この詩はこの作詞家が北海道を訪ね、石川啄木のことを調べていく中で湧いたイメージをしたためたものなのだそうです。そういわれないと分からない一般的な内容ではありますが...

橋本国彦歌曲集では藍川盤にも関盤にも両方収録されており、全く違う味わいではありながらも甲乙付けがたい魅力です。岡本敦郎に近い雰囲気ならたぶん藍川さんの方なのでしょうが、関さんの濃厚な解釈もたいへん印象的でした。

( 2007.01.01 藤井宏行 )


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