TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Der Tod und der einsame Trinker   Op.62-3  
  Lieder um den Tod
死神と孤独な酔っ払い  
     死者の歌

詩: モルゲンシュテルン (Christian Otto Josef Wolfgang Morgenstern,1871-1914) ドイツ
    Auf vielen Wegen - Vom Tagwerk des Todes 5 Der Tod und der einsame Trinker

曲: キルピネン (Yrjo Kilpinen,1892-1959) フィンランド   歌詞言語: ドイツ語


Guten Abend,Freund!
“Dein Wohl!”
Wie geht's?
“Dein Wohl!”
Schmeckt's?
“Dein Wohl!”
Du zürnst mir nicht mehr?
“Dein Wohl!”
Im Ernst?
“Dein Wohl!”
Hab Dank!
“Dein Wohl!”
Aber...
“Dein Wohl!”
Zuviel!
“Dein Wohl!”
Nun...
“Dein Wohl!”
Wie du willst!
“Dein Wohl!”
Narr!
“Dein Wohl!”
Genug!
“Dein...”

今晩は、友よ!
 乾杯!
元気か?
 乾杯!
旨いか?
 乾杯!
おまえもう俺のこと怒ってないか?
 乾杯!
本当に?
 乾杯!
ありがとよ!
 乾杯!
だがな...
 乾杯!
もういい!
 乾杯!
おい...
 乾杯!
勝手にしろ!
 乾杯!
バカヤロウ!
 乾杯!
いいかげんにしろ!
 乾...


ムソルグスキーの「死の歌と踊り」でいえば、酔いつぶれた農夫が雪嵐の中で死神に凍り付かされる「トレパーク」のイメージに通じる歌かと思います。ただこちらでは短い言葉のぷつリ・ぷつりという応酬で不気味さを醸し出しています。最後は死神の怒りに触れて、この酔っ払い息絶えてしまったのでしょうか。不気味ではあるのですがどことなくユーモアも漂わせ、この歌曲集「死者の歌」の中でも不思議な味わいを見せてくれます。死神の登場はピアノの激しいアルペジオで表現され、しばらくその伴奏の合間にぽつりと台詞を喋ります。しばらくは死神はそんな風に仰々しい伴奏と共に言葉を発しますが、段々と酔っ払いとレベルが揃ってきて(打ち解けてきて?)同じような会話の応酬になり、そして最後に怒りに震える場面でまた冒頭の仰々しい伴奏が戻ってきます。
その間酔っ払いの方はといえばもう聞こえるか聞こえないかすれすれのか細い声で同じ言葉を繰り返す、もはやこの人、アルコール中毒で心はあちらの世界に飛んでいってしまっているということなのでしょう。死神の方が人間くさく感情をあらわにして、酔っ払いの方が非人間的に無表情だという対比がこの詩と歌のミソなんでしょうか。

往年の名バリトンで日本でも良く知られたゲルハルト・ヒュッシュが歌ったこの歌(1935録音)では、あざといくらいに死神に表情を付けていて面白いです。この人、こんな芸達者だったんだと改めて見直しました。逆に新しい録音のヨルマ・ヒュンニネンのものの方が歌も音楽も張り詰めていて、この曲の恐怖感が良く出ているように思いました。

( 2006.12.13 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ