S'il est un charmant gazon FWV. 78 |
もし素敵な芝生があれば |
S'il est un charmant gazon que le ciel arrose, Où naisse en toute saison quelque fleur éclose, Où l'on cueille à pleine main lys,chèvre-feuille et jasmin, J'en veux faire le chemin Où ton pied se pose! S'il est un sein bien aimant dont l'honneur dispose, Dont le ferme dévouement n'ait rien de morose, Si toujours ce noble sein bat pour un digne dessein, J'en veux faire le coussin Où ton front se pose! S'il est un rêve d'amour,Parfumé de rose, Où l'on trouve chaque jour quelque douce chose, Un rêve que Dieu bénit,où l'âme à l'âme s'unit, Oh! j'en veux faire le nid Où ton coeur se pose! |
もし、空に育まれた素敵な芝生があったなら そこに一年中、美しい花が咲き乱れ そこから思い切り、百合や葛やジャスミンを摘み取ることができたなら 僕はあなたの歩く道すべてに 花を敷き詰めてしまうのに もし、立派な慈しみ深い胸があったなら そこにあなたを愛する心が常に変わらず 常にあなたを想いながらときめいていたら 僕はそれをあなたの枕にして ゆっくり休ませてあげられるのに もし、バラの香りに満ちた愛の夢があったなら そこに毎日、素敵なことがみつけられ 心と心を結び付ける、神様の祝福を受けた夢だったなら 僕はそれを愛の巣にして あなたの心にやすらぎをあげるのに |
フランクの上品で美しい旋律が見事に生かされた素晴らしい歌曲です。
この詩にはリストやサン・サーンスの作曲もありますし、また初期のフォーレも「愛の夢」という題で曲を付けていますが、私の好みではやはりこのフランクのものが一番素敵だと思います。(サン・サーンスのは未聴ですけれども) 透明なピアノのアルペジォと共にためらいがちに愛の想いを歌い、「僕は」のところでそこはかとない翳りを入れるあたり最高の雰囲気で、ユゴーのロマンティックな詩のスタイルに打ってつけといえるかも知れません。
ユゴーの詩はクラシックの作曲家に大変好まれるようで、こんな風にいろいろな人が同じ詩に曲を付けていてなかなか興味深いですね。 (この詩ではないですが、ラフマニノフとかキュイとかロシアの作曲家のものもあったりします。もちろんロシア語訳に付けていますが)
残念ながら、フランクの歌曲集は今まとまった形では手に入らないかも知れません(昔はラプラント(Bar)の歌ったのがありました)。私が今聴いているのは、イギリスのソプラノ、F・ロットが歌っている「ユゴーの詩による歌曲集」(Harmonia Mundi)です。イギリスの歌手はけっこう代々フランス歌曲を得意にしている人が多いようですが、彼女もそんなひとりなのでしょう。このようなリリックな歌では絶妙な味わいを聴かせてくれます。このCDでは他にもフォーレやドリーブ、ビゼーやサン・サーンスなどのフランス勢の他、リストやワーグナー!の曲も収録されていてとても面白い聴きものです。
( 1999.08.06 藤井宏行 )