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Neujahrsglocken   Op.60-17  
  Das stille Leuchten
新年の鐘  
     歌曲集『静かなる輝き』

詩: マイヤー (Conrad Ferdinand Meyer,1825-1898) スイス
    Gedichte: II. Stunde  Neujahrsglocken

曲: シェック (Othmar Schoeck,1886-1957) スイス   歌詞言語: ドイツ語


In den Lüften schwellendes Gedröhne,
leicht wie Halme beugt der Wind die Töne:

Leis verhallen,die zum ersten riefen,
neu Geläute hebt sich aus den Tiefen.

Große Heere, nicht ein einzler Rufer!
Wohllaut flutet ohne Strand und Ufer.

大気にどよめきが膨れあがり
響きは草茎の如くたやすく風に撓む

最初の呼声は微かな余韻となり
新たな鐘音が深奥より湧く

群れなして呼応する大いなる軍勢!
妙音の浜なく岸なき氾濫


 スイスを含むドイツ語圏の国々は新年午前零時から数分間一斉に教会の鐘を鳴らします。それは普段よりも大きく力強く鳴らされ、いくつもの教会の鐘が重なり合って響き合います。その音とともに人々は教会へ向かい、真夜中に新年のミサが始まります。そして人々は新年を祝って爆竹を鳴らし、花火を打ち上げて大騒ぎします。我が国ではクリスマスがお祭り騒ぎで、正月は静かに過ごしますが、ドイツでは逆なのだそうです。
 さてこのマイヤーの詩ですが、タイトルと詩の内容から見て、こうした新年に鳴らされる鐘を描いた詩であることは間違いありません。しかし詩人の感性は純粋に鐘の響き合いの妙だけを観じているようです。「ローマの泉」と題されながら、水の動きのみを追った作品と共通する、マイヤーらしい極度に凝縮された抒情詩です。
 シェックの作曲は、鐘の響きを模倣するピアノのオスティナートが印象的。祝祭的気分は感じられず、神秘的な鐘の響き合いを厳粛に描いています。演奏はフィッシャー=ディースカウ盤に長があるものの、H.ファスベンダー盤も良好。

( 2006.11.27 甲斐貴也 )


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