Tol’ko uznal ja tebja |
はじめてあなたを知って |
Tol’ko uznal ja tebja, i trepetom sladkim vpervye serdtse zabilos’ vo mne. Szhala ty ruku moju, i zhizn’,i vse radosti zhizni v zhertvu tebe ja prines. Ty mne skazala: “ljublju” i chistaja radost’ sletela v mrachnuju dushu moju. Molcha gljazhu na tebja, net slova vse muki,vse schaste vyrazit’ strasti moej. Kazhduju svetluju mysl’, vysokoe kazhdoe chuvstvo ty zarozhdaesh’ v dushe. |
私ははじめてあなたを知って この甘いときめきを感じた わたしの胸はどきどきする あなたが手を触れるだけで 人生を、私の人生の幸せすべてを あなたのために犠牲にしてもいいとさえ思う あなたは私にいう「君を愛してる」と すると静かな喜びが現れて 私の憂鬱な心に飛び込む 静かにあなたを見つめる 言葉はいらない 私のこの気持ちを伝えるには 明るいこの想い 気高いこの心はみな あなたが魂の底から信じさせてくれたこと |
爽やかな愛の歌、プーシキンの友人でもあった詩人アントン・デルヴィークはこんな感じの素朴な味わいの詩をたくさん書いているのでしょうか。私がロシア歌曲の中で見かけた彼の作品はもっぱらこんな風です。
有名なものではアリャビエフの「ナイチンゲール」の歌詞が彼の作ですし、また最近取り上げたものではダルゴムイシスキーの「16歳」が、もとネタはドイツの詩ですがロシア語詞が彼の手になるもので、とても素朴な村娘の表情がたいへん可愛らしかったです。
さて、こちらは手元にロシア語の原詩しかなく、英語や日本語のお手本がなかったのでうまく訳せていない可能性もありますけれども、曲想からして恐らくこんな意味で間違いないだろうとは思います。「16歳」と同じように素朴な感じを強調してみましたがいかがなものでしょうか。ほのかな翳りを見せながらも、淡々と愛の喜びを歌うグリンカらしい美しい歌曲ですが、私はヴィシネフスカヤ/ロストロポーヴィチの演奏(DG)で聴いたのが初めてです。あまり取り上げられることは多くないのでしょうか。素敵な曲だけにちょっともったいない感じです。
( 2006.11.26 藤井宏行 )