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Das Ende des Festes   Op.60-15  
  Das stille Leuchten
宴の終わり  
     歌曲集『静かなる輝き』

詩: マイヤー (Conrad Ferdinand Meyer,1825-1898) スイス
    Gedichte: IV. Reise  Das Ende des Festes

曲: シェック (Othmar Schoeck,1886-1957) スイス   歌詞言語: ドイツ語


Da mit Sokrates die Freunde tranken
Und die Häupter auf die Polster sanken,
Kam ein Jüngling,kann ich mich entsinnen,
Mit zwei schlanken Flötenbläserinnen.

Aus den Kelchen schütten wir die Neigen.
Die gesprächesmüden Lippen schweigen.
Um die welken Kränze zieht ein Singen...
Still,des Todes Schlummerflöten klingen.

ソクラテスと共に友等と酌み交わした折のこと
皆の頭がソファの背に沈み始めた頃に
私は覚えている、ひとりの若者が現れたのを
笛吹く手弱女(たおやめ)ふたりを従えて

我らの傾けた杯は既に干され
語り疲れた口は閉ざされて
萎める花環のあたりから歌声が聞える・・・
静まれ、これは死の微睡(まどろみ)の笛の音だ


一見プラトンの『饗宴』からの情景と思われる詩ですが、『饗宴』にこのようなエピソードはありません。そこでネットで調べてみると、この詩はドイツの画家アンゼルム・フォイアーバッハ Anselm Feuerbach(1829-1880)の絵「プラトンの饗宴 ”Das Gastmahl des Plato”」に触発されて書かれたらしいことがわかりました。フォイアーバッハはブラームスやベックリーンと親しく、その死に際しブラームスは、シラーの詩による合唱曲「哀悼の歌(悲歌)」を作曲しています。
 ただ、フォイアーバッハの絵を見ても、この情景そのものが描かれているわけではありません。左側に、女性を二人連れた若者がいるにはいますが・・・。むしろ、『饗宴』の一番最後、ソクラテスを交えた宴が朝まで続き、ソクラテス以外の者がほとんど眠ってしまう場面の方がマイヤーの念頭にあったのではないかという気もします。
そのいささか俗っぽくユーモラスな『饗宴』の終わりの場面を、その後のソクラテスの運命を示唆する厳粛でデモーニッシュなものに高めようとする創作なのでしょうか。そう思えば、あのメーリケの短編小説「旅の日のモーツァルト」の最後に置かれた、ヴォルフも作曲している詩「それを思え、おお魂よ! Dank'es,o Seele!」を思わせるところもあります。
シェックの作曲は、ひそやかなピアニッシモに貫かれ、心地よい眠りと死の魅惑を描く繊細な音楽。演奏はフィッシャー=ディースカウがさすがの素晴らしさです。

参考サイト:
http://www.philipharland.com/main3.html (このサイトの下記pdf文書)
http://www.philipharland.com/Greco-Roman Meals Seminar/2003 Klinghardt Paper.pdf
http://commons.wikimedia.org/wiki/Anselm_Feuerbach
二種の「プラトンの饗宴」
http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Anselm_Feuerbach_002.jpg
http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Anselm_Feuerbach_003.jpg

参考文献:
『饗宴』プラトン(久保勉訳)岩波文庫

( 2006.11.23 甲斐貴也 )


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