L'aurore s'allume |
朝焼けが広がり |
L'aurore s'allume, L'ombre épaisse fuit; Le rêve et la brume Vont où va la nuit; Paupières et roses S'ouvrent demi-closes; Du réveil des choses; On entend le bruit. Tout chante et murmure, Tout parle à la fois, Fumée et verdure, Les nids et les toits; Le vent parle aux chênes, L'eau parle aux fontaines; Toutes les haleines Deviennent des voix! Tout reprend son âme, L'enfant son hochet, Le foyer sa flamme, Le luth son archet; Folie ou démence, Dans le monde immense, Chacun recommence Ce qu'il ébauchait. |
朝焼けが広がり 深い暗闇は逃げ去っていく 夢と霧も 夜の去った彼方へと飛び去り まぶたとバラのつぼみも やっと半分だけ開いた さまざまなものの目覚める その音が聞こえるだろう すべてのものが歌いさざめく すべてのものが一度に喋りだす 煙も青い草も 鳥の巣も屋根も 風はカシの木に話しかけ 水は噴水に話しかける あらゆる息づくものが 声を発するのだ すべてのものが魂を取り戻す 赤ん坊にはガラガラ 暖炉には炎 リュートには弓 狂っていようと馬鹿げていようと 世界はまた始めるのだ おのおのがまた あらかじめ決めていたことを |
夜明け・朝焼け・あけぼのを表す言葉Auroreをタイトルに用いた歌曲としてはOp.39-1の“Aurore”の方が大変よく知られていますが、初期に書かれた作品番号の付いていないこのユゴーの詩による歌も味わい深さでなかなか捨てがたいものがあります。もともと出版されなかったために作品番号がついておらず、フォーレ自身は気に入っていなかった作品であると言われていますが、私にとってはフォーレの作品の中でもこの曲は非常に好きなもののひとつに挙げられます。この曲もOp.39-1同様「あけぼの」という題で呼ばれることもありますが、わざわざ区別しにくくすることもないので、詩の冒頭の題名「朝焼けが広がり」(→こうすると今度は「優しい歌」の第2曲と区別が付かなくなるぞという声も来そうではあるが)をここでは取らせていただきました。
初期の歌曲作品の常で非常に親しみやすいメロディですが、とくに「すべてのものが歌いさざめく」のところで見せる優雅な転調がとても印象的です。冒頭のちょっと悲しげな情景描写が、そこでざわめく賑わいと共に明るく力強い音楽に変わっていくところは何度聴いてもいいなあと思います。
歌曲全集のアメリンク、そして初期作品を多く集めているフォン・シュターデの歌曲集と2つのCDでそれぞれ印象的な歌が聴けます。特に全集でもないのにこの曲をわざわざ取り上げてくれているフォン・シュターデのものは彼女のしっとりした声もあいまって実に素晴らしいです。
( 2006.11.25 藤井宏行 )