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Otchego?   Op.6-5  
  6 Romansov
なぜ?  
     6つのロマンス

詩: メイ (Lev Aleksandrovich Mei,1822-1862) ロシア
      Warum sind denn die Rosen so blaß? 原詩: Heinrich Heine ハイネ,Buch der Lieder - Lyrisches Intermezzo(歌の本-抒情小曲集)

曲: チャイコフスキー (Pyotr Ilyich Tchaikovsky,1840-1893) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Otchego poblednela vesnoj
pyshnotsvetnaja roza sama?
Otchego pod zelenoj travoj
golubaja fialka nema?

Otchego tak pechal’no zvuchit
pesnja ptichki,nesjas’ v nebesa?
Otchego nad lugami visit
pogrebal’nym pokrovom rosa?

Otchego v nebe solntse s utra
kholodno i temno,kak zimoj?
Otchego i zemlja vsja syra
i ugrjumej mogily samoj?

Otchego ja i sam vse grustnej
i boleznennej den’ oto dnja?
Otchego,o,skazhi mne skorej ty,
pokinuv,zabyla menja?

どうして春なのに蒼ざめてるの
華やかな姿のバラの花は?
どうして緑の草の下で
青いスミレは黙っているの?

どうしてそんなに悲しげな声で
歌う鳥は、大空へと飛立つの?
どうして野原は覆われるの
死装束のような涙の露に?

どうして空の太陽は朝から
冬のように冷たく、暗いの?
どうして大地は湿って
墓場のように陰鬱なの?

どうしてぼくはどんどん悲しくなって
毎日元気をなくしていくの?
どうして、おお、教えて
去ってしまったとたんにぼくを忘れたの?


シューマンの代表作である歌曲集「詩人の恋」の歌詞となっている詩が収められているハイネの詩集「抒情小曲集」の中にある詩を、ロシアの詩人レフ・メイが訳したものに若きチャイコフスキーが大変魅力的なメロディーを付けています。「ただあこがれを」と同じ作品番号6の歌曲集の1曲ですが、私はこちらの方のロシア情緒あふれるメロディーがチャイコフスキーらしく思えてあの人気曲よりもずっと好ましいです。この作品番号6の歌曲群、全体的に有名なものが多いので、チャイコフスキー歌曲集として編まれたものであればこれから普通2〜3曲入っていてこの曲も容易に耳にすることができるのではないでしょうか。
一度聴いたら耳から離れないような美しいメロディで淡々と「Otchego?」と問いを繰り返していきますが、段々感情が昂ぶってきて歌も伴奏も激しくなります。最後は絶叫のようになって去ってしまった恋人への呼びかけとなってメロディは完結することなくふっと途切れて終わりますが、そのあとの後奏に戻ってくるのは最初の淡々としたメロディ。あざといと言ってもいいくらいに見事な構成の歌曲です。

ボロディナの歌ったこの曲が、私はメリハリが非常に良いように聴こえて一番気に入りました。最初の途方に暮れたような表情から段々熱を帯びてくるところなど大変見事です。ヴィシネフスカヤの入れたEMI盤は非常にゆっくりとしたテンポで表情付けも抑えて歌われていたので初めこの曲だと気が付かなかったくらいですが、じっくり聴くとこのスタイルも悪くありません。

ハイネの原詩も載せておきましょう。またこちらの訳詩は昭和初期に活躍した小説家の生田春月のものを載せましょう。この人のハイネの訳詩、なんといいますか本当に艶かしくて俗っぽくてとてもいいのです。機会があればぜひ読んで見てください。



Warum sind denn die Rosen so blaß?

 Warum sind denn die Rosen so blaß?
 o sprich mein Lieb warum?
 Warum sind denn im grünen Gras
 die blauen Veilchen so stumm?

 Warum singt denn mit so kläglichem Laut,
 die Lerche in der Luft?
 Warum steigt denn aus dem Balsamkraut
 verwelkter Blütenduft?

 Warum scheint denn die Sonn' auf die Au,
 so kalt und verdrießlich herab?
 Warum ist denn die Erde so grau,
 und öde wie ein Grab?

 Warum bin ich selbst so krank und trüb?
 Mein liebes Liebchen sprich
 O sprich mein herzallerliebstes Lieb,
 warum verließest du mich?

 なぜに薔薇は青白い
 いとしい人よ、なぜだらう?
 なぜに緑の草の間に
 青い莖はかたらぬか?

 なぜに悲しげな聲をして
 雲雀は空にさへづるか?
 なぜにバルザムの間から
 死骸のにほひが立ちのぼる?

 なぜにあんなに厭はしう
 寒い日は野を照らすだらう?
 なぜに地はこんなに灰色に
 荒れた墓場に似てゐるか?

 いとしい人よ、いつてくれ!
 なぜにわたしはわづらふか?
 いとしい人よ、どうぞいつてくれ
 なぜにわたしをすてたのか?
    (生田春月 訳)

( 2006.11.14 藤井宏行 )


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