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There is a garden in her face    
  The Third and Fourth Booke of Ayres - The Fourth Booke
あの子の顔にはお花畑がある  
     第3と第4の歌の本−第4巻

詩: キャンピオン (Thomas Campion,1567-1620) イギリス
      

曲: キャンピオン (Thomas Campion,1567-1620) イギリス   歌詞言語: 英語


There is a garden in her face
Where roses and white lilies blow;
A heavenly paradise is that place,
Wherein all pleasant fruits do flow:
There cherries grow which none may buy
Till 'Cherry-ripe' themselves do cry.

Those cherries fairly do enclose
Of orient pearl a double row,
Which when her lovely laughter shows,
They look like rose-buds fill'd with snow;
Yet them nor peer nor prince can buy
Till 'Cherry-ripe' themselves do cry.

Her eyes like angels watch them still;
Her brows like bended bows do stand,
Threat'ning with piercing frowns to kill
All that attempt with eye or hand
Those sacred cherries to come nigh,
Till 'Cherry-ripe' themselves do cry.


あの子の顔にはお花畑がある
そこにはバラと白ユリが咲いてる
天上の楽園みたいなところ
すてきなフルーツも育ってる
でもそこに実るさくらんぼは誰も買えない
さくらんぼたちが「熟れたわ」と自分で言うまでは

さくらんぼたちは覆っている
二列になった東洋の真珠を
あの子が愛くるしい笑顔を見せたときに
雪を詰めたバラの蕾のように見えるんだ
でも王様も、王子様も買えない
さくらんぼたちが「熟れたわ」と自分で言うまでは

天使のようなあの子の瞳はさくらんぼを見張ってる
引かれた弓みたいな眉毛も立ちふさがってる
突き刺さるようなしかめ面で殺しかねない
目や手を出そうとしているやつらを
この神聖なさくらんぼに近付こうとしてるやつらを
さくらんぼたちが「熟れたわ」と自分で言うまでは


お色気ソングの有名な作品に「黄色いさくらんぼ」というのがあります。私が子供の頃、ゴールデン・ハーフという若い女性たちのグループが歌っていて、「若い娘は ウッフ〜ン」なんていう歌詞が小学生かそこらの子供にはたいへん刺激が強かった記憶がありました。その後懐メロとかをいろいろ探訪するようになって、実はこの曲オリジナルは昭和34年と更に古く、しかも作詞作曲が星野哲郎&浜口庫之助コンビというのに愕然としたのですが、あそこで強烈に表現されていた妙齢の女性の色気をさくらんぼに喩えるのは、もしかしたらこのトマス・キャンピオンのこの歌がルーツなのかなあ、とそんなことも思ってしまいました。まさにこの歌、女の子の可愛さをさくらんぼに喩えて歌っています。歌の題名としては歌詞の冒頭の“There is a garden in her face”を使うことが多いので気が付きにくいのですが、各節の最後の“Cherry-ripe”っていうのがそれにあたります。なんでもこの16世紀当時にはさくらんぼを売る物売りが往来で出していた売り声なのだそうで、「さーくらんぼー、熟―れたよー」とでも(さおだけ屋のふしで)歌っている感じでしょうか。キャンピオンの曲ではこの“Cherry-ripe”を何度も繰り返してそんな街の物売りの声を真似ているようにも聴こえます。でも本当に可愛らしい詩です。
とはいいながら「黄色いさくらんぼ」と違って随分とガードの固い女性のようですね。というよりも恋することをまだ知らない女の子の冷酷さのようなものを感じます。2節目の二列になった東洋の真珠とはもちろん彼女の美しい歯のこと。そうするとここでいうさくらんぼって彼女の唇のことでしょうか。
そのさくらんぼを固く守っている瞳と眉毛、なんとも微笑ましいではありませんか。

トマス・キャンピオンのこの曲は古楽のCDでは時折耳にすることがありますが、こうやってみると400年前のポップソング、今の耳でこそヒーリングだの静謐だのと聴こえますけれども、当時の人にはきっと耳新しい鮮烈な響きだったのでしょう。
私はこの曲、Naxosのキャンピオン:リュート歌曲集、Steven RickardsのカウンターテナーにDorothy Linellのリュートのペアで今回聴きました。雰囲気豊かな響きで古楽は少々苦手な私の耳にもたいへん心地よく響きました。

「黄色いさくらんぼ」の、更に最近大ヒットした大塚愛の「あーたし さくらんぼ」のルーツにこんな曲があるのだと思いを馳せてみるのも面白い体験ではないでしょうか。ってこんなことを考えるのは私くらいのものでしょうかね。

( 2006.10.21 藤井宏行 )


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