La vie antérieure |
前世 |
J'ai longtemps habité sous de vastes portiques Que les soleils marins teignaient de mille feux, Et que leurs grands piliers,droits et majestueux, Rendaient pareils,le soir,aux grottes basaltiques. Les houles,en roulant les images des cieux, Mêlaient d'une façon solennelle et mystique Les tout puissants accords de leur riche musique Aux couleurs du couchant reflété par mes yeux... C'est là,c'est là que j'ai vécu dans les voluptés calmes Au milieu de l'azur,des vagues,des splendeurs, Et des esclaves nus tout imprégnés d'odeurs Qui me rafraîchissaient le front avec des palmes, Et dont l'unique soin était d'approfondir Le secret douloureux qui me faisait languir. |
私は長い間、巨大な柱廊の下で暮らしていた 海に沈む太陽は千々の光でこの柱廊を染め この巨大で壮麗な直立する柱は 夜にはまるで玄武岩の洞穴のように見えた 波は大空のイメージを映し出し 荘厳に神秘的に溶け合わせていた その豊かな音楽のハーモニーを 私の目に映る夕日の色の中へと そう、そこだ、私が静かな悦楽の中で暮らしていたのは 青空と、波と、輝く光の中で 香を染み込ませた裸の奴隷たちにかしずかれながら 奴隷たちは私の額に棕櫚の葉で風を送っていたが かれらの気遣いはただ深めていくだけであった 私をひそかに苦しめているこの倦怠感を |
デュパルクの遺された歌曲の中では最も晩年のもの、とはいっても1884年の作とされていますからまだ彼が30代半ばの作品です。その後も長く生きましたが不幸にして曲を生み出せなかった彼の、そうではありながらも最後を飾るにふさわしい傑作歌曲といえましょう。夕日に赤々と照らされた石造りの宮殿の中で奴隷たちにかしずかれている王様は、外面的には満ち足りた生活を送っているように見えながら、心の中では満たされない苦悩で一杯です。力強い、ドラマティックな音楽ではありますが、なぜだか怒りに震えているような激しさがあります。
美しい夕日の描写が盛り上がったあと一瞬の間をおいて、「そう、そこだ C'est là,c'est là」と叫び出すところはことのほか印象的で、やるせない倦怠感があふれてきます。王侯貴族としての前世の暮らしを夢想しながら語っていますが、ここで歌っているのは現世での苦悩。やりきれないほどの重苦しさを詩も曲も訴えかけます。
フランス歌曲の中では重厚さに持ち味のあるデュパルクならではの傑作でしょうか。こういうのもやはりジェラール・スゼーの歌が見事だと思います。
( 2006.10.13 藤井宏行 )