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Sapphische Ode   Op.94-4  
  Fünf Lieder
サッフォー風のオード  
     5つの歌曲

詩: シュミット,ハンス (Hans Schmidt,1856-1923) ドイツ
    Gedichte und Übersetzungen - In antiker Form  Gereimte sapphische Ode

曲: ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Rosen brach ich nachts mir am dunklen Hage;
Süßer hauchten Duft sie als je am Tage;
Doch verstreuten reich die bewegten Äste
Tau,der mich näßte.

Auch der Küsse Duft mich wie nie berückte,
Die ich nachts vom Strauch deiner Lippen pflückte:
Doch auch dir,bewegt im Gemüt gleich jenen,
Tauten die Tränen.

ある夜、私が暗い生け垣から摘み取ったバラは
昼間にも甘い香りを漂わせている
ただ、残されたバラの枝は溢れんばかりに流す
涙の露を。それは私を濡らす。

そんな風にあなたとのくちづけの香りが私の心を震わせる
ある夜、あなたのくちびるの花畑から私が摘み取ったときに
そしてあなたもまた、残されたバラの枝のように
心ふるわせ、涙を流す。


ハンス・ホッターが先ごろ94歳で大往生を遂げました。
歌曲会館で私が取り上げた歌曲の中でも、シューベルトの「セレナード」「春に」、シューマンの「2人の擲弾兵」。そして掲示板でのホッター追悼でフランツ・ペーターさんが真っ先に取り上げられたブラームスの作品から「日曜日」 といった風に改めて振り返ってみるとホッターの歌を取り上げたものは結構な数があります。
(メーリケやアイヒェンドルフ、ミケランジェロの詩になる歌曲集が印象的なヴォルフを私は取り上げていなかったのがちょっと意外でしたが、これは甲斐さんはじめもっとヴォルフを語るに値する方にお譲りするということで失礼させて頂いています)

ということで、彼の追悼の意味も込めて取り上げるのは、私にとっても今を溯ること20数年前、高校生の時に1500円の廉価版LPを買って打ちのめされ、それから今に至る歌曲遍歴のきっかけとなったホッターの歌ったブラームスの歌曲集から。こちらも実は私の大好きな「日曜日」「恋歌(愛の歌)」「メロディのように」「喜びにみちたぼくの女王よ」といったところは皆すでに取り上げられてしまっていますので今回は控え目なこの曲を。控え目とはいえ詩・曲とも結構濃密な出来栄えの作品です。ホッターはこの歌を淡々と、暖かく包み込むように歌っています。
涙を流す恋人をそっとなぐさめるようなすてきな味わいに仕上がりました。

最近は詩の意味を緻密に解釈し、美声をうまくコントロールして詩と音楽の世界を美しく表現する、というスタイルばかりの歌になっている中、技巧や声の美しさは必ずしも超一級ではないにも関わらず、にじみ出る暖かい味わいでドイツ歌曲の数々を歌った彼の録音は、円生などの落語家の過去の録音が今に残るようにこれからも聴き継がれていくのでしょうか?
それとも、多くの往年の歌手たちのように時の流れと共に古いスタイルとして忘れ去られてしまうのでしょうか。年末にちょっとそんなことをしみじみと考えてしまいました。
どうか彼の歌の録音が私だけでなく、これからの多くの人の永遠の宝として残りますように...

( 2003.12.21 藤井宏行 )


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