TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


曇 天    
  在りし日の歌
 
    

詩: 中原中也 (Nakahara Chuuya,1907-1937) 日本
    在りし日の歌 (1938)  

曲: 別宮貞雄 (Bekku Sadao,1922-2012) 日本   歌詞言語: 日本語


 ある朝 僕は 空の 中に
黒い 旗が はためくを 見た
 はたはた それは はためいて いたが、
音は きこえぬ 高きが ゆえに

 手繰(たぐ)り 下ろそうと 僕は したが
綱も なければ それも 叶わず
 旗は はたはた はためく ばかり
空の 奥処(おくが)に 舞い入る 如(ごと)く

 かかる 朝(あした)を 少年の 日も
屡々(しばしば) 見たりと 僕は 憶(おも)う
 かの時は そを 野原の 上に
今はた 都会の 甍(いらか)の 上に

 かの時 この時 時は 隔つれ
此処(ここ)と 彼処(かしこ)と 所は 異(ことな)れ
 はたはた はたはた み空に ひとり
いまも 渝(かわ)らぬ かの 黒旗よ



( 2019.08.25 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ