De Profundis Op.135-1 Symphony no. 14 |
深き淵より 交響曲第14番「死者の歌」 |
Los cien enamorados duermen para siempre bajo la tierra seca. Andalucía tiene largos caminos rojos. Córdoba,olivos verdes donde poner cien cruces que los recuerden. Los cien enamorados duermen para siempre. |
百人もの恋わずらいが 永遠の眠りにおちた 乾いた土のその下で。 このアンダルシアには 長い、真っ赤な道が続く。 緑のオリーブのコルドバの街 そこに百本の十字架を立てよう 彼らを忘れてしまわないために。 百人もの恋わずらいが 永遠の眠りにおちた。 |
ショスタコーヴィチの傑作交響曲、その冒頭を飾るのはスペイン内戦でファシストに暗殺された詩人&劇作家フェデリコ・ガルシア=ロルカの詩、バスで重々しく歌われます。De profundisとは聖書の中にある言葉で、「深き淵より」と普通訳されます。死者のための祈りの言葉としてよく唱えられますので、より分かりやすく「死者への祈り」というタイトルでも良いかも知れません。
ガルシア=ロルカの詩というと、こんな感じで幻想的な言葉を紡ぐ中、死へのイメージが鋭く突き刺さってくるものが多いような気がします。その鋭さがこの訳でうまく出せたでしょうか。ロシア語版でショスタコーヴィチの使っているのはY.トゥイニャーノフ訳とありますから、恐らくあのプロコフィエフの映画音楽で知られた「キージェ中尉」の原作者。とすれば露訳の方も著作権が切れていることになりますが、ここではガルシア=ロルカの原詩の方だけを載せました。この曲に関してはロシア語バージョンとも詩の内容にはそれほど違いはないですが、この交響曲、あまり日本では原詩との対訳で論じられることの多くない曲でもありますので(私の持っている原語演奏版のハイティンク/コンセルトヘボウ管の録音でさえも、原詩との対訳はウサミナオキ氏のロシア語版からの訳がそのまま使われており、一部に詩の内容が対応が取れていないところがありました)、特に原詩とロシア語詞の違いの大きいアポリネールのものなどはこういう形でまとめて置くのも価値があるかなあ、と。
ショスタコーヴィチのシニカルで壮大な交響曲作品を愛する方は、コンドラシンだとかバルシャイなどの熱気あふれる激しい演奏をこの交響曲第14番にも求めるようですけれども(私もかつてはそうでした)、今回じっくり原詩を紐解きながらハイティンクの録音を聴いて感じたことは、もしかするとこの曲、フォーレやデュリフレのレクイエムのように透徹した死者のためのミサ曲なのかも知れず、バーバラ・ボニーやウォルフガング・ホルツマイヤーなんて人をソロにして、緻密で静謐な音楽にすることでもっと見えてくるものもあるのではないかなあ、なんてことです。その意味でも全曲ロシア語の第1版でなく、各国語の原詩で歌われる第3版の方が私にとってはいろんなことを気付かせてくれたという意味でも今ではより興味深い版ですので、ちょっと原詩にこだわって紹介してみようかと思います。原詩の著作権が日本ではすべて切れているのももうひとつの理由ですが...
( 2006.07.28 藤井宏行 )