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Peizazh    
 
風景  
    

詩: ツヴェターエワ (Marina Ivanovna Tsvetaeva,1892-1941) ロシア
      PAISAJE 原詩: Federico Garcia-Lorca ガルシア=ロルカ,Poema del Cante Jondo - Poema de la siguiriya gitana

曲: ミンコフ (Mark.Minkov,1944-2012) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Maslichnaja ravnina
raspakhivaet veer,
zapakhivaet veer,
Nad porosl’ju maslichnoj
sklonilos’ nebo nizko,
i l’jutsja temnym livnem
kholodnye svetila.
Na beregu kanala
drozhat trostnik i sumrak
a tretij-seryj veter.
Polnym-polny masliny
tosklivykh ptich”ikh krikov.
O,bednykh plennits staja!
Igraet t’ma nochnaja
ikh dlinnymi khvostami.

オリーブの畑が揺れる
扇を広げたように
扇を閉じたように
オリーブの若い芽に向かって
空が低く垂れ込め
真っ暗な土砂降りの雨のように
冷たい天の星たちが降り注ぐ
運河の岸辺には
葦と黄昏が身を震わせ
さらに灰色の風が加わる
オリーブは悲しげな鳥の
叫び声に満ちている
おお、哀れな奴隷たちの群れよ
彼らの長い尾を
夜の暗闇がもてあそんでいる


メランコリックな歌曲。ポピュラーソングみたいでもあります。作曲者のマルク・ミンコフについてはネットで調べても詳細なキャリアは詳しく分かりませんでしたが、映画音楽などで活躍している人のようです。
ショスタコーヴィチの「スペインの歌」Op.100目当てで聴いたロシアのメゾソプラノ、オリガ・ボロディナの歌ったスペイン歌曲集のCDで、グリンカやダルゴムイシスキーの素敵なスペイン風歌曲に混じって収録されていたこの歌曲、何が興味深いと言ってフェデリコ・ガルシア=ロルカの詩をマリーナ・ツヴェターエワがロシア語訳しているというその1点に尽きます。いずれもショスタコーヴィチに縁のある詩人2人のコラボレーション、西側ではほとんど無名の作曲者の作品であるにも関わらずあえてこの曲をグリンカやダルゴムイシスキーなどのスペイン風歌曲に交えてこの録音に取り上げてくれた歌手やプロデューサーの慧眼に感謝しなくてはなりません。
この「風景」という詩、ショスタコーヴィチの交響曲第14番の冒頭を飾るガルシア・ロルカの詩「深き淵より」や「マラゲーニャ」と同じ1921年の詩集(出版は1931年)「カンテ・ホンドの詩」から取ったものです。「カンテ・ホンド」とはフラメンコの中でももっともディープな歌のことを指すようで、ちょうど日本のド演歌に対応するでしょうか。
スペイン語の原詩はこちらです。原詩を読んだときは分からなかったのですが、叫びの実(原詩を直訳すると「オリーブの上には叫びがたくさんぶら下がっている」で、このぶら下がっているのが鳥の群れなのですね。


PAISAJE

El campo
de olivos
se abre y se cierra
como un abanico.
Sobre el olivar
hay un cielo hundido
y una lluvia oscura
de luceros fríos.
Tiembla junco y penumbra
a la orilla del río.
Se riza el aire gris.
Los olivos
están cargados
de gritos.
Una bandada
de pájaros cautivos,
que mueven sus larguísimas
colas en lo sombrío.


風景

オリーブの
畑は
開いたり閉じたりする
まるで扇のように
オリーブの木の上には
のしかかってくるような空
そして暗い雨のように
降り注ぐ冷たい星たち
震えてる葦と黄昏が
川のほとりにあり
灰色の空気がよどむ
オリーブは
たわわに実らせている
叫びの実を
一群の
捕らわれた鳥たちが
その長い尾を
暗闇の中で動かしている

( 2006.07.23 藤井宏行 )


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