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Venecianskaja noch    
 
ヴェネチアの夜  
    

詩: コズロフ (Ivan Ivanovich Kozlov,1779-1840) ロシア
      Венецианская ночь

曲: グリンカ (Michael Glinka,1804-1857) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Noch’ vesennjaja dyshala
svetlo - juzhnoju krasoj;
tikho Brenta protekala,
serebrimaja lunoj;

otrazhen volnoj ognistoj
blesk prozrachnykh oblakov,
i voskhodit par dushistyj
ot zelenykh beregov.

Svod lazurnyj,tomnyj ropot
chut’ drobimyja volny,
pomerantsev,mirtov shopot
i ljubovnyj svet luny.

upoen’ja aromata
i tsvetov,i svezhikh trav,
i vdali napev Torkvata
garmonicheskikh oktav.

Vse vlivaet tajno radost’,
chuvstvam snitsja divnyj mir;
serdtse b”etsja; mchitsja mladost’
na ljubvi vesennij pir,

po volnam skol’zjat gondoly,
iskry bryzzhut pod veslom
zvuki nezhnoj barkaroly
vejut legkim veterkom.

春の宵は息づいている
南国の明るい光に照らされて
ブレンダ川の水は流れる
月あかりの銀色に輝きながら

さざめく波の上に映っている
すきとおった雲の輝き
かぐわしい香りが立ち上る
緑の岸辺から

青い空、物憂いさざめき
砕ける波の立てる音
オレンジやミルテの木々のささやき
そして愛に満ちた月の光

むせかえるような濃厚な香りは
花々と生い茂る草からくる
そして遠くからはトルクァートの歌声
響きの良い八行詩だ

あらゆるものがひそやかな幸せを運び
私はすばらしい夢を見る
心は高鳴り、若さは弾ける
愛にあふれる春の宴に

波をぬってゴンドラは進む
櫂の下には弾ける雫
やさしい舟歌の調べは
軽やかなそよ風にただよう


ロシアにとっては南国、ヴェニスのむせ返るような夜に歌われるゴンドラの歌、まだ季節は春なのですがまるで雰囲気は夏の宵です。ただ曲の感じはモーツアルトの歌曲のようにすっきりいています。そこにほのかなロシア情緒が見え隠れして、得も言われないような美しい情景が描き出されました。裕福な地主の息子だったグリンカは若い頃からイタリアを初めとするヨーロッパにはよく旅をしていたようですが、そんな旅の思い出を一篇の美しい歌に記したという感じでしょうか。
グリンカの歌曲の中でも比較的初期の作品です。

ブレンダ川(運河)といえば、ヴェニスの有名な運河、そこに舟を浮かべながら、月明かりの下のデートとしゃれ込んでいるところでしょうか。トルクァートとあるのはイタリアの詩人トルクァート・タッソー (Torquato Tasso, 1544-1595)のこと。彼の作った詩を誰かが遠くで朗読しているのでしょうか...

( 2006.07.17 藤井宏行 )


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