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Dansons la gigue   Op.5-2  
  Quatre poèmes pour voix,alto et piano
ジーグを踊ろう  
     声とヴィオラとピアノのための4つの詩

詩: ヴェルレーヌ (Paul Verlaine,1844-1896) フランス
    Romances sans paroles - Aquarelles 3 Streets I

曲: レフラー (Charles Martin Loeffler,1861-1935) フランス→アメリカ   歌詞言語: フランス語


  Dansons la gigue!

J'aimais surtout ses jolis yeux
Plus clairs que l'étoile des cieux,
J'aimais ses yeux malicieux.

  Dansons la gigue!

Elle avait des façons vraiment
De désoler un pauvre amant,
Que c'en était vraiment charmant!

  Dansons la gigue!

Mais je trouve encore meilleur
Le baiser de sa bouche en fleur
Depuis qu'elle est morte à mon coeur.

  Dansons la gigue!

Je me souviens,je me souviens
Des heures et des entretiens,
Et c'est le meilleur de mes biens.

  Dansons la gigue!

  ジーグを踊ろう!

なによりもぼくはあの娘のきれいな瞳が好きだった
空の星たちよりもっと明るい瞳
ぼくはあの娘のいたずらっぽい瞳が好きだった

  ジーグを踊ろう!

あの娘はほんとによく知っていた
哀れな恋人を嘆かせるすべを
それがまたほんとにすてきだった

  ジーグを踊ろう!

けれど、ぼくが今でもずっとすてきだと思うのは
あの娘のくちびるがくれた花ようなくちづけ
あの娘がぼくの心からいなくなってからもずっと

  ジーグを踊ろう!

ぼくは覚えてる 覚えてる
すごした時間とかわした言葉を
そしてそれこそがぼくの一番の宝物

  ジーグを踊ろう!


イギリスはロンドンを訪問中の詩人、そこで出会った行きずりの少女(娼婦だという味気ないことを言う人もありますが...)の思い出にひたっているところに舞曲ジーグの鄙びた音が聴こえてくる、といったストーリーです。詩の最後に付けられたサブタイトルに「ソーホーで」とありますが、ここはロンドンでも屈指の歓楽街、女の子に弄ばれる詩人の情けなさと、そして純粋さが光る傑作詩ではないでしょうか。当時ジーグという舞曲はイギリスで大流行していて、さながら国民的舞踊のようになっていたのだそうで、詩を読むだけでも踊りの音楽が聴こえてくるような、そんな味わいです。
この詩、個人的にはヴェルレーヌの詩の中で一番心に残っているものだったりするのですが、残念なことに有名なフランスの作曲家がこの詩に付けた歌曲はほとんどないようです。今回取り上げるのはチャールズ・マーティン・レフラー(1861-1935)のもの。この人のことはあんまりご存じない方のほうが多いでしょうか。私もアメリカのレーベルでいくつか室内楽や管弦楽を耳にしたことくらいしかなかったのでずっとアメリカ人の作曲家かと思っていたのですが、よくよく調べてみると彼はベルリンの生まれで少年期はロシアで過ごし、そして音楽教育はフランスで受けてしばらくフランスで活躍し、それからアメリカに渡ってボストンで没した人のようです。ということで経歴はものすごいコスモポリタンなのですが、歌曲ではフランス語のテキストによるものをたくさん書いてくれています。フランス歌曲、という位置付けではほとんど無視されているように思えますけれども、私はこの人のフランス歌曲、けっこうな掘り出し物だと思いました。ヴェルレーヌやボードレールの有名な詩に付けたものがけっこうあるのですが、美しさ溢れるメロディと伴奏でとても聴き応えがあるのです。特にこの曲を含めいくつかの曲は伴奏にピアノとヴィオラ(またはチェロ)を使っており、その雰囲気が大変に味わい深く、フランス歌曲をやる人にはもっともっと取り上げて貰いたいなあ、と思える作品揃いです。ヴェルレーヌでもこの詩や「ナイチンゲール」など、たいへん有名な詩であるにも関わらずあまり他の作曲家が取り上げていないものも歌曲にしてくれているのも嬉しいところです。フォーレやアーンの曲で知られた「白い月(恍惚の時 l'heure exquise)」もありましたが、これは中山晋平の童謡のようなメロディの曲になっていてこれもまた面白かったです。

このレフラーの歌曲集、私が知る限りでは3枚あります。
ヘレヴェッヘのもとでフランス古楽などでも活躍しているメゾソプラノ歌手ブリジッテ・バレイのものは一番お洒落な感じで私はとても気に入りました。レフラーの歌曲を初めて聴いて鮮烈な印象を受けたのがこの録音だからかも知れません(Voice of lyrics)。
もう1枚、メゾのデイドラ・パルモアの録音(koch)はもう少ししっとりした感じ。15曲と収録曲数が多いのも魅力でしょうか。この「ジーグを踊ろう」は伴奏ともどもとても鄙びた味わいがあって素敵です。
最後のはバリトンのウイリアム・ダズレイの歌ったもの(ASV)。他のフランスの室内楽もカップリングされているために歌曲は5曲しか収録されておらず、残念ながらこの「ジーグ」も収録されていませんが、珍しいデュリフレの室内楽(フルート・チェロ&ピアノによる「プレリュード・レシタティーボと変奏曲」)なんかも入っていてフランスの知られざる佳品の聴ける興味深い録音です。

( 2006.07.17 藤井宏行 )


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