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Barkarola    
  Proshchanije S. Peterburgom
ふなうた  
     ペテルスブルグよさようなら

詩: クーコリニク (Nestor Vasil'yevich Kukol'nik,1809-1868) ロシア
      Баркарола

曲: グリンカ (Michael Glinka,1804-1857) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Usnuli golubye
segodnja,kak vchera.
Okh,volny udalye,
nadolgo l’? - do utra? A...

U nas i v mrake nochi
volnenie ljubvi
slezami topit ochi,
ognem gorit v krovi.

I pleskom razmakhnulos’
shirokoe veslo,
i tikho raspakhnulos’
zavetnoe okno. O...

I vam pokoju,volny,
stradalets ne daet:
nadezhd i strasti polny,
vsju noch’ ljubov’ poet.

Usnuli golubye
segodnja,kak vchera.
Okh,volny udalye,
ne spat’ vam do utra. A...

青空は眠りについた
今日も昨日と変わらずに
おお、さざめく波よ
いつまで騒ぐのだ?-朝までかい?

夜の闇の中でも
この愛のときめきは
ぼくらの瞳を涙で濡らし
血潮を燃え上がらせる

この大きなオールは
しぶきを上げて揺れる
そして愛しい人の窓は
静かに開かれるのだ

波よ、お前を安らがせようとは
愛に苦しむ者は決してしない
望みと熱情に溢れて
そいつは一晩中愛を歌うのだ

青空は眠りにつく
今日も昨日と変わらずに
おお、さざめく波よ
朝までお前は眠れないのさ


1976年録音のガリーナ・ヴィシネフスカヤのグリンカ・ラフマニノフ歌曲集の録音(DG)が、30年を経てようやくCDとして再リリースされました。この録音の存在を知った1970年代の後半といえばまだ私も中学生かそこらでしたから高価なレギュラー盤のLPなど買えるはずもなく、ただカタログにあったジャケット写真が記憶に残ったのみ、そしてその後グリンカやラフマニノフの歌曲の素晴らしさを、そしてヴィシネフスカヤという歌手の凄さを知ってからのこの20余年というもの、この録音の復活を待ち望み続けていたといっても過言ではありません。ロシア歌曲など世界的に見てもファンはそんなに多くないですからよくよくのことがない限りこの再発は無理かと思っていましたら、彼女の80歳の記念ということで思いがけず出され、そして私も初めてこの幻の録音を聴くことができました。
彼女のグリンカの歌曲は1990年代に入ってからEratoレーベルに録音したものがありましたが、これと比べても声の張りといい情感の深みといい段違いの美しさです。ロストロポーヴィチの伴奏も絶品ですし、曲目も収録曲数こそ多くないですが、ラフマニノフでは「歌うな乙女よ」や「春のせせらぎ」に「ヴォカリーズ」と素敵な3曲も入れてくれていますし、グリンカでも抒情味のあふれる曲を中心とした選曲で更に魅力的です。「忘れないあの素晴らしいひととき」なんて期待以上の素晴らしさ。テンポを大きく揺らしてかなり表情付けが激しいですが、そのすべてが見事にツボにはまってこの魅惑的なラブソングを見事に演奏してくれています。残念ながら非常に廉価での再リリースのためか収録曲の歌詞が収録されていませんけれども、それはこうして自分で訳しながらカバーしていきましょう。ロシア歌曲を愛される方はぜひこの録音を手に取って聴いていただき、そしてよろしければ拙訳でもご参照ください。全部がいつ終わるかは分かりませんが...

CDの最後を飾っているこの「ふなうた」、グリンカの歌曲集「ペテルスブルクよさようなら」の第8曲、イタリアかスペインのイメージでしょうか。海の波に揺られながらのセレナーデです。これはEratoの再録音と唯一ダブっていますがやはりこのDG録音は格別。同じく収録されている「ヴェネチアの夜」と共にロシア人の南の国への憧れを見事に再現してくれています。

( 2006.07.15 藤井宏行 )


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