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すきとおってゆれているのは    
  歩行について
 
    

詩: 宮沢賢治 (Miyazawa Kenji,1896-1933) 日本
    春と修羅 (1924)  小岩井農場 パート9

曲: 林光 (Hayashi Hikaru,1931-2012) 日本   歌詞言語: 日本語


すきとほつてゆれてゐるのは
さつきの剽悍(へうかん)な四本のさくら
わたくしはそれを知つてゐるけれども
眼にははつきり見てゐない

ユリアがわたくしの左を行く
大きな紺いろの瞳をりんと張つて
ユリアがわたくしの左を行く
ペムペルがわたくしの右にゐる

明るい雨がこんなにたのしくそそぐのに
馬車が行く 馬はぬれて黒い
ひとはくるまに立つて行く

すべてさびしさと悲傷とを焚いて
ひとは透明な軌道をすすむ
ラリツクス ラリツクス いよいよ青く
雲はますます縮れてひかり
わたくしはかつきりみちをまがる



( 2019.04.29 藤井宏行 )


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