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Le colibri   Op.2-7  
  Sept melodies
ハチドリ  
     7つの歌

詩: ルコント・ド=リル (Charles-Marie-René Leconte de Lisle,1818-1894) フランス
    Poèmes barbares  Le colibri

曲: ショーソン (Amédée-Ernest Chausson,1855-1899) フランス   歌詞言語: フランス語


Le vert colibri,le roi des collines,
Voyant la rosée et le soleil clair,
Luire dans son nid tissé d'herbes fines,
Comme un frais rayon s'échappe dans l'air.

Il se hâte et vole aux sources voisines,
Où les bambous font le bruit de la mer,
Où l'açoka rouge aux odeurs divines
S'ouvre et porte au coeur un humide éclair.

Vers la fleur dorée,il descend,se pose,
Et boit tant d'amour dans la coupe rose,
Qu'il meurt,ne sachant s'il l'a pu tarir!

Sur ta lèvre pure,ô ma bien-aimée,
Telle aussi mon âme eut voulu mourir,
Du premier baiser qui l'a parfumée.


緑色をしたハチドリは、丘の王様
露を、そして太陽の光を眺めながら
細い草の葉で織り上げた巣の上で光輝いている
まるで一筋の光が空へと差すように

彼は近くの泉へと大急ぎで飛んで行く
そこでは竹が海のような響きを作り出し
天国の香りを漂わす赤いハイビスカスが
花開き、そして心に弾けるようなうるおいを運んでくる

金色に輝く花のそばに降りて止まり
彼は愛の蜜をたくさん飲み干す、バラの杯から
そしてそこで死ぬのだ、花が枯れるかも知れないことなど知らずに

おまえの綺麗なくちびるの上で、おお恋人よ
私の魂もそんな風にして死んでしまいたいものだ
かぐわしい最初のくちづけのときに


ショーソンの歌曲の中では、これも同時にUPした「蝶々たち」と並んで最も良く演奏されるものでしょうか。歌のテーマも、そして曲想も非常に良く似ています。
「蜂雀(はちすずめ)」という題で紹介されることが多いですが、ここで歌っているのは南米の小さな鳥「はちどり」のことです。鳥であるにも関わらず花の蜜を吸って生きていることから、ここでも花の蜜を花額から飲み干す、といった情景を、恋する人とのくちづけになぞらえています。

竹やらハイビスカスやら、南の国にありそうなものなら何でも繰り出してきているところがヨーロッパの詩人の創作たるところでしょうが、おかげで何処ともつかない不思議な極彩色の桃源郷の中で、花の蜜に陶酔して死んでいくハチドリ、という強烈なイメージのものとなりました。ショーソンがつけた曲は楚々としていて、そんなに熱帯のむせ返るような濃密さはないのですけれども、彼の書いた歌曲の中では1・2を争う名旋律ですので、音楽の美しさに陶酔することならできます。

スゼーやノーマン、シュトゥツマンなどの入れたショーソン歌曲集でも味わい深く演奏されていますが、楚々とした中に陶酔する感じはあまりドラマティックでない方が好ましいです。アメリンクの入れたものなども良かったですが、私がこの曲で一番好むのはテノールのマーティン・ヒルが入れたもの(Meridian)。彼みたいにリリコなテノールが歌ったこの歌が、この陶酔的な魅力が最大限に発揮できるように思えるのです。

( 2006.05.28 藤井宏行 )


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