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Extase    
 
エクスタシー  
    

詩: ラオール (Jean Lahor,1840-1909) フランス
    L'Illusion - 1. Chants de l'Amour et de la Mort 66 Nocturnes

曲: デュパルク (Eugène Marie Henri Fouques Duparc,1848-1933) フランス   歌詞言語: フランス語


Sur un lys pâle mon coeur dort
D'un sommeil doux comme la mort
Mort exquise,mort parfumée
Du souffle de la bien aimée
Sur ton sein pâle mon coeur dort
D'un sommeil doux comme la mort

青白いユリの上でぼくの心は眠る
死のように甘美な眠りを
精妙な死、香り高き死
それは愛する人の吐息がもたらしてくれる
青白い胸の上でぼくの心は眠る
死のように甘美な眠りを


ジャン・ラオールの詩につけたデュパルクの歌曲は3曲ありますが、「悲しき歌」と「フィレンツェのセレナード」に並んでこいつも歌の詩としてはなかなか良い感じではないでしょうか。
「恍惚」というタイトルが付けられることがほとんどですけれども、今や日本語でも性的な喜びを表す場合には「エクスタシー」という言葉は普通に使われるのと、「恍惚」では認知症のイメージもなくはないのでここでは「エクスタシー」としました。
とはいえ残念なことにこの詩で描かれているような状況、個人的には体験したことがありませんのであまり実感がないままに訳しています。音楽もワーグナーのトリスタンとイゾルデを思い起こさせるような官能的なもの(伴奏のメロディなどソックリです)、女に溺れきったような情景が見事に描写されており、デュパルクの歌曲の持つある種の濃密さが非常に良く出た傑作だと思いますので、どうかこちらの方面に精通された方のより素晴らしい訳を待ち望みます。
余計な解説とは思いますが、蒼白いユリ、というのは恋人の胸のこと。ふたつのふくらみをこの花にたとえているのですね。なお原詩ではここにユリは出てこなくて、5行目と同じ文句がそのまま使われています。

( 2006.05.26 藤井宏行 )


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