L'absent Op.5 Trois mélodies |
いなくなった人 3つのメロディ |
- Sentiers où l'herbe se balance, Vallons,coteaux,bois chevelus, Pourquoi ce deuil et ce silence ? - Celui qui venait ne vient plus. - Pourquoi personne à ta fenêtre, Et pourquoi ton jardin sans fleurs, Ô maison ! où donc est ton maître ? - Je ne sais pas,il est ailleurs. - Chien,veille au logis. - Pour quoi faire ? La maison est vide à présent. - Enfant,qui pleures-tu ? - Mon père. - Femme,qui pleures-tu ? - L'absent. - Où s'en est-il allé ? - Dans l'ombre. - Flots qui gémissez sur l'écueil, D'où venez-vous ? - Du bagne sombre. - Et qu'apportez-vous ? - Un cercueil. |
-草のそよぐ小道 谷間に、丘に、この豊かな森は なぜこんなに悲しげに静かなのか? -いつも来るあの人がもう二度と来ないからさ -なぜお前の窓辺には誰もおらず お前の庭には花が咲かないのだ おお家よ、お前のあるじはどこにいる? -私は知らない、どこか別のところだろうさ -家を守っている犬よ、-何のために? 家には今誰もいないのに -子供よ、何を泣いている -お父さんのこと -女よ、何を嘆くのだ -いなくなったあの人のこと -では彼はどこに行ったのだ? -暗闇の中 -岩場で嘆く波よ、 どこからお前たちは来た? -暗い監獄から -そして何を運んで来たんだ? 棺をひとつ |
ヴィクトル・ユゴーはクーデターで権力を掌握したナポレオン3世に反対し長い亡命生活に入ります。どんなに懐柔されても頑として帰国を拒み、ナポレオン3世がプロシャとの戦争に敗れて捕らわれるまで国外に暮らして詩作に、そして他の亡命者たちの支援にと奔走していたのだといいます。
そんな彼のこんな詩、これはどう見てもこの権力者の犠牲になった人を追悼し、権力者の横暴を告発する詩ですね。彼が亡命中に書いた「懲罰詩集」(1853)の中のひとつの詩に付けたのがこの曲です。フォーレが初めて通作歌曲の形式を取った作品としても知られていますが、確かにこの詩の展開であれば1番から4番まで同じメロディを繰り返す有節歌曲は作れないでしょう。
しみじみと野原で自然に問いかける冒頭から、犬を含めた家族の嘆きが大きく盛り上がる中間部、そしてまた静かな自然がちょっとだけ顔を出しますが、最後は告発するかのように強い悲しみで「棺をひとつ」と歌います。
フォーレの資質にはあまりそぐわないような内容の詩ではありますが、それでも精一杯にこのドラマを紡ぎ出している音楽です。若き日のひとつのチャレンジの結果として味わってみられてはいかがでしょうか。
( 2006.05.24 藤井宏行 )