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A nous la liberté    
  À Nous la Liberté
自由を我等に  
     映画「自由を我等に」

詩: クレール (René Clair,1898-1981) フランス
      

曲: オーリック (Georges Auric,1899-1983) フランス   歌詞言語: フランス語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
自由 それは人間の在り方そのもの
だが人間は牢獄や
法律や労役や会社や家庭を作っちまった
そうだよな?
だったら歌おう
おい兄弟、人生は素晴らしいんだ
自由を知っているものにはな
だからそれに向かって突き進め
...
あらゆるところに、笑いと歌がある
あらゆるところに、愛と酒がある
我等に、我等に自由を!

(著作権のため第1節の大意の紹介です)


ルネ・クレールの1931年の傑作トーキー映画「自由を我等に」の音楽は、オネゲルやプーランクと共に6人組のメンバーであったジョルジュ・オーリックでした。ご存知の方はご存知の通り、彼はクラシック音楽よりも今や「ムーラン・ルージュ」や「美女と野獣」それに「ローマの休日」をはじめとする映画音楽の分野での活躍の方が今や知られているようになりましたが、この「自由を我等に」の音楽もそんな中のひとつで、彼の映画音楽キャリアの中でも比較的最初のものになります。

この主題歌はとても楽しい、ウキウキするような行進曲。もともと映画自体が可笑しくもちょっとほろ苦いミュージカルコメディですからこんな感じが実にぴったりです。
刑務所のエミールとルイは脱獄を図りますがルイだけが成功、持ち前の世渡りのうまさでやがて大きな蓄音機工場の社長になります。そこへやってきたのがようやく出獄をはたしたエミール、社長がよもや刑務所での仲間とは気が付きませんけれども、この2人、社長室で運命的な再開を果たします。
いろいろすったもんだがあった末に正体がばれそうになったルイは社長の座を放り出し、エミールと共に放浪の道を選びます。お金やらしがらみやらでがんじがらめになるよりは当てどない放浪の方がよほど「自由」であるというこの世の中の真実。工場労働者たちがチャップリンの「モダン・タイムス」を思わせる機械に縛り付けられて人間性を抑圧されている描写もあるので余計にそう感じられるのでしょうか。

主題歌となる行進曲は脱獄のシーン、社長室での再会、そして何もかも捨てて2人で去っていく最後のシーンで効果的に使われています。サビの部分の「À nous, à nous la liberté!(我等に、我等に自由を!)」の小気味の良いメロディはいやになるくらい耳に残ります。というのはこの旋律、この映画をご存知なくても日本では多くの人にとってたいへんなじみ深いメロディでもあるからです。

といいますのは「おかあさんといっしょ」などでの定番の童謡ともいえる「こぶたぬきつねこ」(山本直純作曲)、この前奏に「ちゃっからっちゃ ちゃっからっちゃ らっちゃっちゃ」という小気味よいリズムのメロディが使われていますが、なんとそのメロディがこの「自由を我等に」のサビの部分そのままなのです。
さすが天才・山本直純。童謡といえども深いです。これは偶然の一致ではなく彼が狙って使ったメロディであるとは思うのですが、何でこの「こーぶた、たーぬき」の前奏に「自由を我等に」なんか持ってきたのか?の理由は分かりませんでした。
でもこれを聴きなじんでから映画を見るとなんとも可笑しい気分になります。

「こぶたぬき」の方はいやというほどの数の歌が聴けますが、この「自由を我等に」の歌、映画のサントラくらいしか聴ける機会はないかも知れません。これはこれで素晴らしいのですが、もっと歌い継がれても良いように思うのですけれども...

そこでこの曲も歌える訳詞に挑戦しようと思ったのですが、「自由」という漢語がどうしてもこのメロディと折り合いが付かず断念しています。ルンペンの歌だけれども格調高い漢語をバンバン使ってみるっていうのがコミカルに面白いようにも思えますが、音で聴くだけでは意味が取れなくなる問題がありますので...あんまり説明調になってしまうのも今ひとつでもありますし。まあこの歌はオリジナルのフランス語の響きと共に楽しむのが一番でしょう。

( 2006.05.19 藤井宏行 )


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