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Psyché    
 
プシシェ  
    

詩: ピエール・コルネイユ (Pierre Corneille,1606-1684) フランス
      

曲: エミール・パラディーレ (Emile Paladilhe,1844-1926) フランス   歌詞言語: フランス語


Je suis jaloux,ma Psyché,de toute la nature!
Les rayons du soleil vous baisent troup souvent,
Vos cheveux souffrent trop les caresses du vent.
Quand il les flatte,j'en murmure!
L'air même que vous respirez
Avec trop de plaisir passe sur votre bouche.
Votre habit de trop près vous touche!
Et sitôt que vous soupirez
Je ne sais quoi qui m'effarouche
Craint,parmi vos soupirs,des soupirs égarés!

私はうらやましい プシシェよ この世の中で!
太陽の光はお前に何度もくちづけをし
お前の髪をそよ風はやさしくなでる
風がお前を喜ばすとき 私は文句を言いたくなる
お前の呼吸するただの空気さえ
とても生き生きとしてお前の口を通り過ぎているようだから
お前のドレスも体にぴったりと張り付いている!
そしてお前が溜息をつくとき
なぜ私はこんなにドキドキするのかわからない
お前の溜息が、その狂おしい溜息が怖いのだ!


往年の歌手のSP復刻の録音を聴いていると、今ではほとんど取り上げられることのなくなった歌曲に出会うことがあります。もちろんそんな曲の中にはもはや現代人の心を惹かなくなってしまったものもあるのでしょうが、多くは何でこんな素敵な曲が聴かれなくなってしまったのだろう?と疑問に思えるようなものであるように私には思えます。
世の中のちょっとした流行すたりでちょっと取り上げられる頻度が下がるととたんに知名度が下がって更に取り上げられなくなり、そしてまた知名度が下がる、という悪魔のサイクルに陥ってしまう...
私にとって、このパラディーレの「プシシェ」はそれがとても残念に思えるとても素敵な曲でした。
ロッテ・レーマンやマジー・テイトといった昔のソプラノ歌手の録音で聴いた時にも大変印象的だったのですが、最近ルネ・フレミングが発掘してくれてとても素晴らしい歌唱を聴かせてくれたので改めてこの曲の良さを見直しました。

ゆったりと、溜息をつくようなピアノ(プシシェの溜息を描写しているのでしょうか?)に乗って、歌もまた実らぬ恋に溜息をついているかのようなやるせなくも物憂いメロディ。静かに語るように歌われます。

プシシェ(プシケー)といえばギリシャ神話で、あまりの美しさに美の女神アフロディテが嫉妬をし、キューピッドに命じて醜い豚飼いに恋させるようにさせようとした女性。キューピッドが誤って自分の胸に恋の矢を刺したために、キューピッドと結ばれます。まるでこの音楽は恋したキューピッドが溜息をついているかのよう。
この歌詞は、フランス戯曲の世界では非常に著名な劇作家ピエール・コルネイユ(Pierre Corneille 1606-1684)の戯曲「プシシェ」の第3幕から取られたものなのだそうです。

ソプラノの声で聴くのも良いですが、テノールのマーティン・ヒルが入れたフランス歌曲集(Meridian)でも溜息ものの美しさで聴かせてくれます。

そのほかの録音は残念ながら知らないのですが、ぜひまた再びフランス歌曲のレパートリーとして多くの方に取り上げて頂けると素晴らしい作品だと思います。濃密なレイナルド・アーンといった感じでプログラムが彩れると思いますが...

( 2006.05.01 藤井宏行 )


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