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POTOMKI   Op.109-3  
  Rjat Satiry
子孫  
     チョールヌイの詩による5つの風刺

詩: チョールヌイ (Sasha Chyorny,1880-1932) ロシア
      Потомки

曲: ショスタコーヴィチ (Dimitry Shostakovich,1906-1975) ロシア   歌詞言語: ロシア語


POTOMKI

Nashi predki lezli v kleti
I sheptalis’ tam ne raz:
“Tugo,brattsy...vidno,deti
Budut zhit’ vol’gotnej nas”.

Deti vyrosli. I eti
Lezli v kleti v groznyj chas
I vzdykhali: “Nashi deti
Vstretjat solntse posle nas”.

Nynche tak zhe,kak voveki,
Uteshenie odno:
Nashi deti budut v Mekke,
Esli nam ne suzhdeno.

Dazhe sroki predskazali:
Kto - let dvesti,kto - pjat’sot,
A poka lezhi v pechali
I mychi,kak idiot.

Razukrashennye duli,
Mir umyt,prichesan,mil...
Let chrez dvesti? CHerta v stule!
Razve ja Mafusail?

JA,kak filin,na oblomkakh
Perelomannykh bogov.
V nerodivshikhsja potomkakh
Net mne brat’ev i vragov.

Ja khochu nemnozhko sveta
Dlja sebja,poka ja zhiv,
Ot portnogo do poeta -
Vsem ponjaten moj prizyv...

A potomki... Pust’ potomki,
Ispolnjaja zhrebij svoj
I kljanja svoi potemki,
Lupjat v stenku golovoj!

子孫

われらのご先祖様は鉄格子にしがみつき
こんな風に繰り返しつぶやいていたものだ
「今は苦しい時代だ、兄弟よ...だがきっと子供たちは
かれらはきっとわしらより自由だ」

子供たちは育った、だが
彼らは恐ろしい時代にやはり鉄格子にしがみつき
そして溜息をつく「わしらの子供たちは
わしらのあと、きっと太陽に出会えるさ」

今では、そう、ご承知の通り
結果は出ている
わたしたちの子供たちがメッカにいるだろう
決して私たちが、ではない

いつそれが来るかの予測もしている
ある者は200年後、別の者は500年後だと
そんな先まで悲しみの中
愚か者のように沈んでいろというのか

飾り付けられた世界は
洗われ、ブラシングされ、小奇麗になるという
200年後かその頃にだって?
私はメトシェラか?

私はフクロウだ、破片の上に止まる
古代の神々の打ち壊され、ばら撒かれた彫像の
まだ生まれてもいない子孫たちなど
私の兄弟にも、敵の中にもいない

ほんのちょっとした灯りでよいのだ
私が生きている間に手にできる
仕立屋から詩人まで
どんな奴でもこれくらい理解できるぞ

で、子孫たちのことは...彼らに任せとけ
自分たちの籤は自分で引かせろ
暗闇を打ち破るには
自分の額を壁にぶつけるのだ


「風刺」の中でテキストが最も問題となったのがこの曲です。初演者のヴィシネフスカヤの助言を入れて「過去の絵」という副題を入れたとしても、ここで子孫たちが幸せになれるのが200年後だ500年後だとむなしい議論をしているのは計画経済下のソヴィエト官僚たちとどう読んでも読めてしまいますから、かなり物議を醸すのも当然といえばいえましょう。メッカというのはイスラム教の聖地ですから、かなり皮肉っぽくパラダイスのことを表現しているようです。また下の方に出てくるメトシェラ(メトセラ)は旧約聖書に出てくる人物で、ノアの箱舟のノアの祖父に当たります。何でこんな人が突然出てくるのかといえば、このメトシェラ、旧約聖書の創世記の中で最も長寿の人物でして、なんと969歳まで生きたことになっています。なるほどそれくらい長生きできれば、彼らの予測(計画)がもしうまくいったとして、そのパラダイスを生きているうちに経験できるわけですな。

音楽はなんとなく諧謔味が溢れるときのプーランクの歌曲を思わせるようなもの。明るいんだか暗いんだか微妙なところで弾けるように歌われます。ヴィシネフスカヤ(EMI)のももちろん素晴らしいんですが、録音が新しいところでコジェナーの歌ったもの(DG)。ド迫力はそれほどない代わりにこの曲に秘められた叙情性がほのかに感じられてなかなか素敵です。

( 2006.05.01 藤井宏行 )


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