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夜深くして歌へるわが歎きの歌   燈暗無人?斷腸 陸放翁    
 
 
    

詩: 佐藤春夫 (Satou Haruo,1892-1964) 日本
    殉情詩集−心の廃墟  

曲: 清瀬保二 (Kiyose Yasuji,1900-1981) 日本   歌詞言語: 日本語


……わが歎きは終(つひ)にわがものなれば
人 これをかへり見ず
又かへり見ることを我は許さず、
ヨブの友よ來たりてヨブを慰めざれ
わが歎きよ おおわがものよ
われは限りなくなんぢを愛す
彼等が妻になすがごとく
また彼(か)の女(ぢよ)らが幼子になすごとく
わが歎きよ ただひとつなるわがものよ
われは妻なく幼子なきわれは
夜もすがら強くなんぢをかき抱きて
なんぢがうへにわが?を盡す
おおわが歎きよ わがひとり子よ
なんぢが母はわが戀にして
なんぢを遺して早く去りぬ
なんぢよ なんぢは面かげ母に似てかなし
わが歎きよ なんぢ生ひ育て
永く生きよ 息絶ゆること勿れ
われをして永く具(つぶさ)になんぢを愛し
なんぢに依りてなんぢの母が面かげを忍ばしめよ
われは今 母なきなんぢをかく強く抱く
夜ふかし 見ずやわが子
なんぢが母の亡霊は今宵もまた來たりて
われとなんぢとの傍にやさしくも添寢したり……



( 2019.03.12 藤井宏行 )


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