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Vaisseaux,nous vous aurons aimés・・・   Op.118  
  L'horizon chimérique
船たちよ、お前たちへの愛は・・・  
     幻想の水平線

詩: ミルモン (Jean de la Ville de Mirmont,1886-1914) フランス
    L'horizon chimérique (1920) 5 Vaisseaux,nous vous aurons aimés・・・

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


Vaisseaux,nous vous aurons aimés en pure perte ;
Le dernier de vous tous est parti sur la mer.
Le couchant emporta tant de voiles ouvertes
Que ce port et mon coeur sont à jamais déserts.

La mer vous a rendus à votre destinée,
Au-delà du rivage où s'arrêtent nos pas.
Nous ne pouvions garder vos âmes enchaînées ;
Il vous faut des lointains que je ne connais pas

Je suis de ceux dont les désirs sont sur la terre.
Le souffle qui vous grise emplit mon coeur d'effroi,
Mais votre appel,au fond des soirs,me désespère,
Car j'ai de grands départs inassouvis en moi.

船たちよ、お前たちへの愛は空しかったのだろう;
お前たちは最後の一艘までみな海に出て行った。
沈む夕陽はいくつもの開いた帆を連れて去り、
この港と私の心は永遠に寂れ果てた。

海はお前たちを、私が留まるこの浜辺の彼方、
お前たち自身の運命へと送り出した。
私にお前たちの魂を繋ぎとめることは許されない;
お前たちには私の知らない遠い世界が必要なのだ。

私はこの地上に望みを抱く者のひとり。
お前たちを酔わせる風は、私の胸を慄きで満たす。
だがお前たちの呼び声に、黄昏の中の私は悲歎に沈む。
私には、いまだ果たされぬ大いなる出帆が残されているのだから。


 ジャン・ド・ラ・ヴィル・ド・ミルモン(1886-1914)の詩による、フォーレ最後の歌曲集の第4曲。これは以前から大好きだった詩だったのですが、最近はヴォルフに打ち込んでいたこともあり、訳す機会を逸していました。ふとしたことで再びこの詩の素晴らしさを感じていた時に藤井さんのフォーレ歌曲大量掲載を知り、わたしも久々にフォーレに取り組んでみたというわけです。
 さてこの詩人については、第一次世界大戦で若くして戦死したということ以外詳細を知らなかったのですが、この訳のために参照した金原礼子著『フォーレと詩人たち』(藤原書店)のかなり詳しい記述により、このあまりにも傷つきやすい若き詩人の実像と、その詩集『幻想の水平線』の概要を知ることが出来たのは収穫でした。
 フォーレの作曲は、詩の言葉の抑揚やリズムを生かした朗唱風のもので、あまり強い印象を与える旋律はありませんが、その淡々とした味わいは絶品で、歌曲のひとつの理想形とすら思えます。
 演奏は被献呈者で初演者のパンゼラをはじめ、スゼーやラプラントの優れた録音がありますが、何度聴いてもわたしにはモラーヌの語りかけるような歌が一番です。この詩の寂しさを生かしきった名唱と思います。
 なお上記『フォーレと詩人たち』によりますと、この詩人の姓は「ラ・ヴィル・ド・ミルモン」で、フランスの研究書などでは「ジャン・ド・ラ・ヴィル」と略記されているそうです。

( 2006.04.19 甲斐貴也 )


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