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La Coccinelle    
 
テントウムシ  
    

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les contemplations - 1. Livre premier -- Aurore 15 La coccinelle

曲: サン=サーンス (Charles Camille Saint-Saens,1835-1921) フランス   歌詞言語: フランス語


Elle me dit: “Quelque chose
Me tourmente.” Et j'aperçus
Son cou de neige,et,dessus,
Un petit insecte rose.

J'aurais dû,- mais,sage ou fou,
A seize ans,on est farouche,-
Voir le baiser sur sa bouche
Plus que l'insecte à son cou.

On eût dit un coquillage;
Dos rose et taché de noir.
Les fauvettes pour nous voir
Se penchaient dans le feuillage.

Sa bouche fraîche était là;
Helas! Je me penchai sur la belle,
Et je pris la coccinelle;
Mais le baiser s'envola.

“Fils,apprends comme on me nomme,”
 Dit l'insecte du ciel bleu,
“Les bêtes sont au bon Dieu;
 Mais la bêtise est à l'homme.”

あの子はぼくに言った「なんだか
くすぐったいわ」 それでぼくは見たんだ
彼女の雪のように白いうなじを、そこに
止まっていたのは赤い色をした小さな虫だった

ぼくはすべきだったんだ、賢明にであれ愚かにであれ
だが、16歳のぼくはウブだった
彼女のキスを求めている口をもっと見るべきだったんだ
彼女の首にいた虫の方よりももっともっと

貝殻のように光るその羽根には
赤地に黒い斑点が見える
小鳥たちも見ていた、ぼくたちをじっと
首を伸ばして、木の枝から

彼女の素敵なくちびるはそこにある
ああ、ぼくはその美しい口に近寄って
そして、てんとうむしを取っちゃったんだ
でもキスは逃げ去ってしまった

「ぼうや、あたしの名から学びなさい」
虫は青空から呼びかける
「虫たちは神様のもの
 だが愚かさは人間のもの」


ついこの間、ビゼーが曲を付けたヴィクトル・ユゴーの微笑ましい詩「テントウムシ」を取り上げたばかりですが、デュパルクの「悲しき歌」と同じ詩のサン・サーンスの歌曲を聴いてみようとフランソワ・ル・ルーの歌ったサン・サーンス歌曲集(Hyperion)を引っ張り出して聴いてみたところ、この同じ「テントウムシ」に付けた曲も収録されており、こちらも大変面白い聴き物でしたので取り上げてみます。

若い男の子のキス初体験の失敗を、ビゼーは可愛らしいメルヘンにしているのに対し、こちらサン・サーンスのはとてもコミカルに描いています。まあ喩えて言えばビゼーの曲は「少女フレンド」のような少女マンガタッチ、サン・サーンスのは「少年マガジン」のような少年マンガのギャグみたいです。最後に飛び去るテントウムシの呼びかけなど、サン・サーンスのでは思いっきり少年をバカにしているかのようなデフォルメの仕方。個人的には少女マンガ風のビゼーのを私は好みますが、このサン・サーンスのも捨てがたい味わいがあります。

ル・ルーの歌が、これまたやり過ぎと思えるくらいにコミカルな表情付けをしてくれているので、そんなギャグマンガ風の印象を持ってしまったところもあると思います。
とにかくこのサン・サーンス歌曲集、多彩な音楽に多彩な表現でとても面白く聴けました。

( 2006.04.19 藤井宏行 )


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