TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Romance de Mignon    
 
ミニョンのロマンス  
    

詩: ヴィルデル (Victor Wilder,1835-1892) フランス
      Kennst du das Land 原詩: Johann Wolfgang von Goethe ゲーテ,Wilhelm Meisters Lehrjahre (ヴィルヘルム・マイスターの修業時代)

曲: デュパルク (Eugène Marie Henri Fouques Duparc,1848-1933) フランス   歌詞言語: フランス語


Le connais-tu,ce radieux pays
Où brille dans les branches d'or des fruits?
Un doux zéphir embaume l'air
Et le laurier s'unit au myrte vert.

Le connais-tu,le connais-tu?
Là-bas,là-bas,mon bien-aimé,
Courons porter nos pas.


Le connais-tu,ce merveilleux séjour
Où tout me parle encor de notre amour?
Où chaque objet me dit avec douleur:
Qui t'a ravi ta joie et ton bonheur?

Le connais-tu,le connais-tu?
Là-bas,là-bas,mon bien-aimé,
Courons porter nos pas.

知っていますか、あの輝かしい国を
金色の果物が枝の上で輝き
穏やかな風がそよぐ
そして月桂樹が緑のミルテと生い茂る国を

知ってますか、知ってますか
そこへ、そこへ、愛しい人よ
急いで歩いていきましょう


知っていますか、あの素晴らしい家を
そこのすべての人が私たちの愛のことを話し
すべてのものが悲しみと共に尋ねてくれる
あなたの喜びや幸せを何が持ち去ったの?と

知ってますか、知ってますか
そこへ、そこへ、愛しい人よ
急いで歩いていきましょう


ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」第3巻、さらわれて旅芸人一座で働かされている少女ミニョンの歌う歌。彼女の故郷、イタリアのことを歌っています。
金色の果物とはゲーテの原詩ではシトロン、とありますからレモンのこと。
これに限らずフランス語に訳されたこの詩はだいぶ原詩をいじっており、また第3節はこの歌では省略されています。とりあえずフランス語に忠実に(もちろん私の誤訳入りですが)訳してみましたが、ゲーテのオリジナルとはかなり違うことをご承知置きください。原詩にはシューベルトはじめ数多くのドイツの作曲家が曲を付けています。ヴォルフのもありますからこの原詩、いずれ甲斐さんが訳してくださるでしょう。

しかしフランス語で聴くと、「知ってますか?」が「ル・コネティ」だったり、「そこへ」が「ラバ」だったりずいぶんと印象が違います。デュパルクの付けた曲もそんなにインパクトのある美しいものでもないのでそう何度も聴きたい、という気はあまりしないのですけれども、ゲーテとデュパルクにつながりがある、ということだけでも非常に興味深い歌曲ではあります。

余談ですが、この詩で歌われる音楽の中で日本で最も知られていると思われるのは、堀内敬三の名訳「君よ知るや南の国」のアリア、これもフランスの作曲家アンブロジアン・トマのオペラ「ミニョン」からの音楽です。こうしてみるとこの詩、けっこうフランス語で歌われているのを耳にしているはずなのですが...

このデュパルクの曲、女声用でもありますし初期の習作的な雰囲気も強いせいか、全集録音でもない限り取り上げられることもほとんどないようです。私が耳にしたのはイギリスのソプラノですがフランス歌曲も得意にしているフェリシティ・ロットがフランスの親しみやすい歌曲やオペレッタのアリアのアンソロジーを入れているForlane盤。
もっともやはりこの曲よりはその次に収録されている同じデュパルクの「悲しき歌」の方にずっとずっと惹かれるものがありますが。

( 2006.04.19 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ