TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Gestille Sehnsucht   Op.91-1  
  Zwei Gesänge
鎮められたあこがれ(1884)  
     2つの歌曲

詩: リュッケルト (Friedrich Rückert,1788-1866) ドイツ
      Jugendlieder

曲: ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


In gold'nen Abendschein getauchet,
Wie feierlich die Wälder stehn!
In leise Stimmen der Vöglein hauchet
Des Abendwindes leises Weh'n.
Was Lispeln die Winde,die Vögelein?
Sie Lispeln die Welt in Schlummer ein.

Ihr Wünsche,die ihr stets euch reget
Im Herzen sonder Rast und Ruh!
Du Sehnen,das die Brust beweget,
Wann ruhest du,wann schlummerst du?
Beim Lispeln der Winde,der Vögelein,
Ihr sehnenden Wünsche,wann schlaft ihr ein?

Ach,wenn nicht mehr in gold'ne Fernen
Mein Geist auf Traumgefieder eilt,
Nicht mehr an ewig fernen Sternen
Mit sehnendem Blick mein Auge weilt;
Dann Lispeln die Winde,die Vögelein
Mit meinem Sehnen mein Leben ein.

黄金の夕映えに身を浸し
なんと厳かに森は立っているのか!
小鳥たちの優しい声に息づいているのは
穏やかにそよぐ夕べの風
風は何をささやくのか、そして小鳥たちは?
彼らはささやいているのだ 眠りにつくこの世界のことを

お前たち望みよ、いつも動いている
心の中に憩いも安らぎもせず!
お前たちあこがれよ、この胸をゆさぶる
お前たちはいつ休むのか、いつ眠るのか?
風のささやく中 そして小鳥たちのささやきの中
憧れに満ちた願いよ、いつお前は眠りにつく?

ああ もはや黄金の遠い彼方へ
我が魂は夢の翼にのって急ぐこともなく
もはや永遠の彼方の星たちに
あこがれの眼差しを持って 我が眼は至ることもない
そして風はささやく それに鳥たちも
我が憧れと共に 我が命もささやいている


Op.91の2つの歌曲は、ピアノと歌にヴィオラを伴った女声(アルト)のための作品。       
チェロでもヴァイオリンでもなくヴィオラ、というのがいかにもブラームスらしいです。
第1曲は、リュッケルトによる悩める心を歌った詩、ただ大自然の中で大いなる悟りの境地に達したかのような悠然たる音楽に仕上がっています。
それ以上に素晴らしいのは第2曲。冒頭からヴィオラで歌いだされる流麗なメロディは、 「マリアの子守歌 」という14世紀の民謡のメロディーだそうです。このメロディがしっとりした歌声に絡みつき、そして昇天していくかのごとく盛り上がってゆく。堅牢な構築性、豊かな歌謡性に、プロテスタントとしての信仰。ブラームスのエッセンスが凝縮されたこの歌曲にはひたすら圧倒されます。
古くからアルト歌手には愛唱された曲。カスリーン・フェリアーなどの名唱が残っていますが、ジェシー・ノーマンの暖かくも力強い歌声で聴くこの2曲は見事すぎるほど見事です。

( 2002.03.25 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ