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Lied    
 
リート  
    

詩: マンデス (Catulle Mendès,1841-1909) フランス
      Lied

曲: シャブリエ (Alexis Emmanuel Chabrier,1841-1894) フランス   歌詞言語: フランス語


Nez au vent,coeur plein d'aise,
Berthe emplit,fraise à fraise,
Dans le bois printanier
Son frais panier.

Les déesses de marbre
Le regardent sous l'arbre
D'un air plein de douceur,
Comme une soeur,

Et dans de folles rixes
Passe l'essaim des Nixes
Et des Elfes badins
Et des Ondins.

Un Elfe dit à Berthe:
“Là-bas,sous l'ombre verte,
Il est dans les sentiers
De beaux fraisiers.”

Un Elfe à la moustache
Très fine et l'air bravache
D'un reître ou d'un varlet
Quand il lui plaît...

“Conduisez-moi,” dit Berthe,
“Là-bas... sous l'ombre verte,
Où snt dans les sentiers
Les beaux fraisiers!”

Leste comme une chèvre,
Berthe courait: “Ta lèvre
Est un fraisier charmant,”
Reprit l'amant.

“Le baiser,fraise rose,
Donne à la bouche éclose
Qui le laisse saisir,
Un doux plaisir!”

“S'il est ainsi,” dit Berthe,
“Laissons sous l'ombre verte
En paix,dans les sentiers,
Les beaux fraisiers!”


顔にそよ風を受け 心も軽く
ベルトは摘みます イチゴをひとつひとつ
春の森の中
新しいカゴへと

大理石の女神たちは
木の上から彼女を見つめてます
優しさに満ちた顔をして
まるでお姉さんみたいに

そこへざわざわさざめきながら
水の精のニクセたちが通っていきます
いたずらな妖精エルフたちや
水の精オンディーヌたちも

ひとりのエルフがベルトに言います
「向こうの緑の木陰
 あの小径のところに
 素敵なイチゴの木があるよ」

口髭を生やしたこのエルフ
とても美男で勇敢そう
兵隊さんかボーイさんみたいで
彼女はとても気に入った

「つれていって」とベルトは言います
「向こうの緑の木陰
 あの小径のところの
 素敵なイチゴの木のあるところへ」

ヤギのように軽やかに
ベルトは走っていきました
「きみのくちびるはおいしそうなイチゴみたい」
と恋するエルフ

「くちづけを、真っ赤なイチゴを
 おくれよ、ぼくの開けた口に
 ぼくの口は待ってるんだ
 甘くおいしい喜びを」

「もしそうだったら」ベルトは言います
「ほっときましょう、向こうの緑の木陰
 そっと静かに、小径をいった
 大きなイチゴのあるところは」


シャブリエのユーモアあふれる音楽はこんな詩と出会うと光り輝くような魅力を発します。他愛もないお話といえばその通りなのですが、ボーイ・ミーツ・ガールの春の寓話としては大変楽しいお話ではないでしょうか。ニクセとはゲルマンの水の精で、甲斐さんがヴォルフの曲 ニクセのビンゼフースの中で詳しく解説されていますのでご覧ください。オンディーヌも水の精ですがゲルマンとラテンの源流の違いがあるのでしょうか。二クセの方はなんとなく恐ろしげなイメージがありますが、オンディーヌの方はフランス語っぽい響きもあって可憐なイメージがします。口髭を生やした妖精っていうのもちょっと面白いです...

さて、シャブリエには2曲この「リート」という題名の歌曲があります。こちらは作曲者と同い年のカチュール・マンデス(Catulle Mendes 1841-1909)という高踏派の詩人の詩に付けたもの。高踏派とは言いながら小粋なお話なのであんまりゲージュツの香りはしませんけれども、それがまたいいんですね。
うきうきと飛び跳ねるようなリズムに俗っぽさ一歩手前のお洒落なメロディ。歌い崩せばいくらでもポップスになってしまいそうなところが面白い歌です。

フランス往年の名歌手、ジャンヌ・バトリの歌ったこの曲(EMI)は、鼻歌でも歌っているかのようなその洒落っぽさと間合いの取り方の品の良さのバランスが絶妙です。この人は弾き語りで歌っていたのだそうですが、そんなところもこの味を醸し出すのに役立っていたのでしょうか。古いSP録音の復刻ですが機会があればぜひお聴き下さい。Naxos Histricalあたりで出して貰えると大変嬉しい名歌手のひとりです。

( 2006.04.08 藤井宏行 )


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