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Le papillon et la fleur   Op.1  
  Deux mélodies
蝶と花  
     2つのメロディ

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les Chants du Crépuscule 27 La pauvre fleur disait au papillon céleste

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


La pauvre fleur disait au papillon céleste:
Ne fuis pas!...
Vois comme nos destins sont différents,je reste.
Tu t'en vas!
Pourtant nous nous aimons,nous vivons sans les hommes,
Et loin d'eux!
Et nous nous ressemblons et l'on dit que nous sommes
Fleurs tous deux!

Mais hélas,l'air t'emporte,et la terre m'enchaine.
Sort cruel!
Je voudrais embaumer ton vol de mon haleine.
Dans le ciel!
Mais non,tu vas trop loin,parmi des fleurs sans nombre.
Vous fuyez!
Et moi je reste seule à voir tourner mon ombre.
A mes pieds!

Tu fuis,puis tu reviens,puis tu t'en vas encore
Luire ailleurs!
Aussi me trouves-tu toujours à chaque aurore
Tout en pleurs!
Ah! pour que notre amour coule des jours fidèles.
Ô mon roi!
Prends comme moi racine ou donne-moi des ailes
Comme à toi!

かわいそうなお花が空の蝶々に言いました
「行かないで!
 なんて二人の定めは違うのでしょう、あたしは留まり
 あなたは行ってしまう!
 それでもあたしたち愛し合っているのよ、人間なしでも生きていける
 彼らからは遠く離れて
 それにあたしたち似てるのよ、みんなは言うの
 あたしたち二人とも「お花」だって!

 なのにああ、そよ風があなたを運び去って、地面があたしを縛り付ける
 ひどい運命だわ!
 あたしは香らせたいのに あなたの飛ぶところを あたしのこの息で
 大空の中!
 でもだめなの あたなはとても遠くに行ってしまう、限りない数の花たちの中へと
 あなたは行ってしまうの!
 そしてあたしは、あたしはここにひとり残って、自分の影を見つめてるだけ
 あたしの足元の!

 あなたは飛び去って、そして戻るけど、そしてまた行ってしまって
 どこか別のところで輝くのね
 だからあなたは毎朝あたしを見るでしょう
 涙に暮れているあたしを!
 ああ、あたしたちの愛が、もっと誠実に毎日続くものだったなら!
 おお、あたしの王様!
 あたしみたいな根を生やして、でなかったらあたしに羽をください
 あなたみたいな羽を!」

フォーレ弱冠16歳のときの最初の歌曲作品、まだ彼自身のスタイルはなく、聴いていてもベルリーニやドニゼッティのオペラアリアという趣の歌曲ですが、踊るようなピアノ伴奏も含めけっこう印象に残る音楽です。テーマは日本の歌謡曲にでもありそうな「花は女か、男は蝶か」みたいな内容ですが、よくよく考えるとこのテーマ自体、こんなところから西洋から日本にもたらされたものなんですね。モーツァルトのオペラ・フィガロの結婚の「もう飛ぶまいぞこの蝶々」を挙げるまでもなく、花から花へ飛び回る蝶々を浮気男に見立てている歌はヨーロッパにはたくさんあるように思えます。
これはユゴーの詩集「薄明の歌(Les Chants du Crepusule 1835)」から取った詩です。当時ユゴーは妻の不倫問題や、自分自身の愛人の問題(当時カトリックが離婚を認めていませんでしたので、この愛人とは結構良い関係が死ぬまで続いたにも関わらずやはり「不倫」になってしまったようです)に悩んでいたときでもあったようなのですが、そんな心情がこの詩のテーマにも反映されているのでしょうか。でも歌はひたすら軽やかに明るいので、少々ミスマッチかも。
曲のイメージ通りに可愛らしく訳語を選んでみましたが、実は「行かないで あなた むごいさだめの ふたり」なんて具合に艶歌っぽいフレーズにした方が実は適切なのかも知れません。

最後の「あたしの王様」というのは花が蝶々に対する呼びかけの言葉。恋人のことを「王様」なんていう言い方をしているのを見たのは私もこれが初めてですので、最初は神様に対するお願いかとも思ったのですが(西洋ではよく神様のことを王様と呼ぶので)、これが主語だと考えるとどうしてもこの王様は蝶々のこととしか考えられないので、そのまま王様と訳しました。
(恋人への呼びかけにしても、蝶々を呼ぶのにも違和感のある表現ではありますが)

フォーレらしさはあまりない曲なのですが意外と人気は高く、けっこう女性歌手の録音があります。ベルカントアリアっぽい美しさに惹かれてのことでしょうか。
軽やかなアメリンクや、対照的にしっとりしたフォン・シュターデなどが素敵です。
(2006.03.29)

コンサートでお使い頂くことになりましたので訳詞を改訂しました

( 2011.02.12 藤井宏行 )


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