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Rêve d'amour   Op.5  
  Trois mélodies
愛の夢  
     3つのメロディ

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les Chants du Crépuscule 22 S'il est un charmant gazon

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


S'il est un charmant gazon que le ciel arrose,
Où naisse en toute saison quelque fleur éclose,
Où l'on cueille à pleine main lys,chèvre-feuille et jasmin,
J'en veux faire le chemin
Où ton pied se pose!

S'il est un sein bien aimant dont l'honneur dispose,
Dont le ferme dévouement n'ait rien de morose,
Si toujours ce noble sein bat pour un digne dessein,
J'en veux faire le coussin
Où ton front se pose!

S'il est un rêve d'amour,Parfumé de rose,
Où l'on trouve chaque jour quelque douce chose,
Un rêve que Dieu bénit,où l'âme à l'âme s'unit,
Oh! j'en veux faire le nid
Où ton coeur se pose!

もし、空に育まれた素敵な芝生があったなら
そこに一年中、美しい花が咲き乱れ
そこから思い切り、百合や葛やジャスミンを摘み取ることができたなら
僕はあなたの歩く道すべてに
花を敷き詰めてしまうのに

もし、立派な慈しみ深い胸があったなら
そこにあなたを愛する心が常に変わらず
常にあなたを想いながらときめいていたら
僕はそれをあなたの枕にして
ゆっくり休ませてあげられるのに

もし、バラの香りに満ちた愛の夢があったなら
そこに毎日、素敵なことがみつけられ
心と心を結び付ける、神様の祝福を受けた夢だったなら
僕はそれを愛の巣にして
あなたの心にやすらぎをあげるのに

この詩につけた歌曲としては、すでに セザール・フランクのものを取り上げています。こちらの典雅でちょっと翳りのあるメロディは大変好ましく、かなりたくさんあるこの詩に付けた歌曲の中では一押しではあるのですが、フォーレのごくごく初期、まだ17歳の1862年に書いたこの曲もなかなか愛らしい味わいに満ちています。まだフォーレ独自の音楽スタイルにはなっておらずまるでシャルル・グノーの歌曲のようですが、ピアノ伴奏も含めて美しいメロディにあふれています。中期以降のたゆたうような転調が苦手でフォーレはどうも、という人も、この作品のようなストレートさは耳にしっくりくるのではないでしょうか。

詩はフランスの文豪、日本では「レ・ミゼラブル」や「ノートルダム・ドゥ・パリ」で知られた人ですが、ロマン派詩人としてもたくさんの詩を書いています。そしてヴェルレーヌと並んで非常に多くのフランスの作曲家たちに取り上げられている人でもあります。この詩の内容は解説の必要もなさそうですね。ストレートな愛の詩です。

フォーレもそんなわけでユゴーの詩にはいくつか曲をつけているのですが、そのすべてが初期の作品に限られます。これは世代的なこともあるのでしょうが、中期以降はルコント・ド=リールやシルヴェストルなどの高踏派、あるいはヴェルレーヌなどの象徴派詩人にこだわっているフォーレの詩人の選択は興味深いところです。
(もっとも私には特に「ロマン派」と「高踏派」の詩の区別はあんまりよくわからないのですが...)

( 2006.03.20 藤井宏行 )


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