TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


La fée aux chansons   Op.27  
  Deux mélodies
歌う妖精  
     2つのメロディ

詩: シルヴェストル,アルマン (Paul-Armand Silvestre,1837-1901) フランス
    Les Ailes d’Or,poésies nouvelles 1878-1880 - Vers pour être chantés 31 La fée aux chansons

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


Il était une Fée
D'herbe folle coiffée,
Qui courait les buissons,
Sans s'y laisser surprendre,
En Avril,pour apprendre
Aux oiseaux leurs chansons.

Lorsque geais et linottes
Faisaient des fausses notes
En récitant leurs chants
La Fée,avec constance,
Gourmandait d'importance
Ces élèves méchants.

Sa petite main nue,
D'un brin d'herbe menue
Cueilli dans les halliers,
Pour stimuler leurs zèles,
Fouettait sur leurs ailes
Ces mauvais écoliers.

Par un matin d'automne,
Elle vient et s'étonne,
De voir les bois déserts:
Avec les hirondelles
Ses amis infidèles
Avaient foi dans les airs.

Et tout l'hiver la Fée,
D'herbe morte coiffée,
Et comptant les instants
Sous les forêts immenses,
Compose des romances
Pour le prochain Printemps!

ひとりの妖精がおりました
野原の草を髪に飾って
森を歩きまわっても
誰も気がつく人はない
四月になったら鳥たちに
歌を教えて暮らします

ツグミやヒワがうっかりと
音を違えて歌っても
歌う彼らのメロディを
妖精はしっかりチェックして
きつく厳しく叱ります
彼ら不出来な弟子たちを

裸の腕はちっちゃくて
草の細い葉っぱのよう
生徒たちの頭をなでて
彼らのやる気を起こしたり
羽根をピシッと引っぱたき
ダメな生徒を叱ったり

ある秋の日の朝のこと
妖精は出てきて驚いた
森の中には誰もいない
南に帰るツバメと一緒に
友達甲斐のない鳥たちは
空へ飛び去ってしまったのです

冬の間じゅう妖精は
枯れ草の葉が髪飾り
時を指折り数えています
誰もいない森の中
そして歌を作ります
またやってくる春のため


フォーレにしては珍しいバラード(歌物語)風の歌です。テーマは可愛らしい野の妖精の四季の暮らし。
ふわふわと楽しげな春の描写と、秋になっての一抹の寂しさ(いったんテンポを落とします)、そして眠そうな冬からまた来る春への希望を歌う最後へと場面展開がとても見事ですが、ハーモニーの進行やメロディなどにフォーレ色がほのかに出ています。しかし全体の曲想はあまり中期以降のフォーレが書かなかったようなお茶目なスタイルなので、聴いていても非常に印象深い曲です。まあそんなわけでか異色作ということであまり取り上げられることは多くないようですけれども...

粟津則雄氏の訳では「歌を教える仙女さま」という題になっていましたが、私にはこれはティンカーベルのような妖精のイメージで、ちょっと仙女という語感はしっくりこないので妖精と訳しました。あとauxをどう訳すかですが(英語のwithに当たりますから直訳すると「歌の精」(The fairy with songs)とする方が正確で、実際そういう邦題もよく見ます)、もうちょっとくだけた感じがこの曲には欲しかったので、私は「歌う妖精」としています。それと訳詞も曲の雰囲気に合わせ少しお茶目に遊ばせて頂きました。そのため原詩とちょっと違っているところもありますがご了承ください。高踏派詩人シルヴェストルの詩にはフォーレもちょくちょく歌をつけており、そのどれもがこんな風に他の彼の歌曲作品と一味違う仕上がりになっているのが興味深いところです。

この曲も軽やかなソプラノが映える曲で、全集のアメリンクやなぜか「レクイエム」とカップリングされているバーバラ・ボニーなどの歌声が素敵でしょうか。意外と秋になってからのしっとりとした寂しさを見事に歌っているのがバーバラ・ヘンドリックス、彼女とフォーレというのはあまり繋がるイメージはなかったのですが意外と好演です。あと、初期の作品にこだわりをみせた選曲のメゾソプラノ、フレデリカ・フォン・シュターデのフォーレ歌曲集に収められているこの歌のふくよかな温かみもなかなか良かったです。

( 2006.03.18 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ