Tajnyje znaki Op.127-6 7 Stikhi Aleksandr Bloka |
秘密のしるし アレクサンデル・ブロークの詩による7つのロマンス |
Razgorajutsja tajnyje znaki Na glukhoj,neprobudnoj stene. Zolotyje i krasnyje maki Nado mnoj tjagotejut vo sne. Ukryvajus' v nochnyje peshchery I ne pomnju surovykh chudes. Na zare golubyje khimery Smotrjat v zerkale jarkikh nebes. Ubegaju v proshedshije migi, Zakryvaju ot strakha glaza, Na listakh kholodejushchej knigi - Zolotaja devich'ja kosa. Nado mnoj nebosvod uzhe nizok, Chjornyj son tjagotejet v grudi. Moj konec prednachertannyj blizok, I vojna,i pozhar - vperedi... |
秘密のしるしが燃え上がる 物言わぬ、重々しい壁の上で 金色と赤いケシの花が 眠りの中、私にのしかかってくる 宵闇の洞穴の中に隠れて 確固たる魔法も見出せずにいるうち 夜明けに青いキメラが 澄んだ大空の鏡を覗き込んでくる 過ぎ去った日々へと逃げ帰り 恐怖のあまり目を閉じる 次第に冷たくなっていく本のページには 乙女の金髪の三つ編みがある 天上の星たちはもはや我がすぐ上に降り来た 陰鬱な夢が私の胸をかきむしる 私の運命ももうすぐ尽きるだろう 戦争が、災厄が待ち構えている... |
これは難しい詩です。他の詩も難しくて意味が取れないところはありましたが、
これは原詩の単語を拾ってもさっぱり全体の意味が掴めませんでしたし、
手持ちのCDの英訳をいろいろ見ても、解釈が大変様々で、訳者の人たちも苦労
しているんだなあということがよく分かります。
眠れぬ夜の妄想といった趣はしますが、喩えとして使われている表現がなんだか意味が分からないのです。
(特に第3節、何でここに乙女の三つ編みが出てくるんでしょうか?)
そうは言ってもここまできたのでこれだけやめてしまうというのも勿体無いですから
内容にかなり疑問を残しつつもとりあえず訳してみました。
革命直後に神経衰弱のようになって、社会の混乱の中1921年に42歳の若さで病死してしまった
ブロークですが、まだ20代そこそこの1902年に書いたこの詩で既にその運命を、
そして祖国ロシアのこれから来る不幸に満ちた時代を予見したかのような内容です。
このショスタコーヴィチの歌曲集の中でも、他の詩は1899年を中心に18世紀に書かれたものなのに対し
(まだ18・19歳のときの詩なんですね)これだけは20世紀に入って書かれたものなので、
ブロークの詩のスタイルも大きく違っているのかも知れません。
ヴァイオリンとチェロの2つの弦楽器による精妙な美しさの伴奏はひそやかに、この明け方まで続く
心の苦しみをそっと支えてくれます。
アニタ・ソルドのソプラノにストックホルム・アーツ・トリオの演奏(Naxos)は、消え入るような
精妙な美しさでこの曲を聴かせてくれます。彼らの演奏するこのブローク歌曲集、全体的に強いアクがなく
美しくまとまった良い演奏だと思いますし、何よりNaxosで廉価で手に入りますので、この歌曲集を
初めて聴こうという方にはお薦めです。カップリングのピアノ3重奏曲2曲も実に素敵ですし。
( 2006.03.17 藤井宏行 )