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Es liebt sich so lieblich im Lenze   Op.71-1  
  Fünf Gesänge
春に恋はとても愛らしい  
     5つの歌

詩: ハイネ (Heinrich Heine,1797-1856) ドイツ
    Neue Gedichte - Romanzen(新詩集-ロマンス 1844) 13 Frühling

曲: ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Die Wellen blinken und fließen dahin -
Es liebt sich so lieblich im Lenze!
Am Flusse sitzt die Schäferinn
Und windet die zärtlichsten Kränze.

Das knospet und quillt,mit duftender Lust -
Es liebt sich so lieblich im Lenze!
Die Schäferinn seufzt aus tiefer Brust:
Wem geb’ ich meine Kränze?

Ein Reuter reutet den Fluß entlang,
Er grüßt so blühenden Muthes!
Die Schäferinn schaut ihm nach so bang,
Fern flattert die Feder des Hutes.

Sie weint und wirft in den gleitenden Fluß
Die schönen Blumenkränze.
Die Nachtigall singt von Lieb’ und Kuß -
Es liebt sich so lieblich im Lenze!

さざ波がきらめき、遠くへと流れてゆく
春に恋はとても愛らしい
川のほとりに羊飼いの娘が座って
きれいな花の冠を編んでいる

つぼみをつけ芽吹いてる、かぐわしい喜びと共に
春に恋はとても愛らしい
羊飼いの娘は胸の底から溜息をついた
「わたしの冠をだれにあげればいいの?」

ひとりの騎士が馬に乗り川辺を駆けてきて
若々しい快活さで彼女にあいさつした!
羊飼いの娘は彼を恥ずかしげに見つめる
遠く去っていく帽子の羽根がひるがえる

娘は泣いて、おだやかな川の流れに投げた
あのきれいな花の冠を
ナイチンゲールが愛とくちづけの歌を歌う
春に恋はとても愛らしい


ありがちなメルヘンストーリーに、あの屈折しまくった詩をたくさん作ったハイネにしてはえらくストレートな情景を描いていると思いますが、やはり心の機微を見事に描いていることでは、さすが大詩人と言えましょう。
これに、あの屈折しまくった曲を書くブラームスがこれまた直球勝負で実に美しい情景描写を、愛情に満ちた眼差しで描いたものですから、彼の歌曲の中でも忘れ難い佳曲となりました。可愛らしい冒頭の伴奏が恋に憧れる娘の心を描き、騎士が現れるところの颯爽とした音楽も素敵です。最後はまた娘の恋への憧れが戻ってきて優しく曲を閉じます。
こういう歌物語は、フィッシャー?ディースカウの独壇場ではないでしょうか。場面の展開点の情景描写など見事です。

( 2001.03.26 藤井宏行 )


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