Schast'je Op.79-11 Iz Jevrejskoj Narodnoj Po`ezii |
しあわせ ユダヤの民族詩より |
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私は夫の腕を取り歩く 私も年寄りだし、私の騎士様も年寄りだけど 二人で連れ立ち、劇場に行って 一階席の券を二枚買ったよ 夜遅くまで、二人そこに座って 素敵な夢に浸っていたよ 幸せなこと一杯に囲まれた ユダヤ人の靴屋の妻は 国じゅうに話してやりたいよ 私たちの明るい、輝く未来をね 私らの息子たちは医者になったのさ 私らの上には星が輝いているんだよ |
最後はメゾソプラノがうきうきするような踊りのリズムでささやかな幸せを歌います。やがてソプラノとテノールも掛け合いに参加して、この深い悲しみとアイロニーに満ちた歌曲集を最後の最後では輝かしく終わらせますが、詞に書かれたその幸せはつつましく、そしてとても儚いかも知れないもの。お祭りのダンス曲のように軽快ではありますが、終わったあとに残るのは一抹の寂しさです。
この曲は、ピアノ伴奏のオリジナルを好む私にも管弦楽伴奏のにぎやかさが好ましいです。日本で入手しやすい(と思われる)ハイティンク指揮アムステルダムコンセルトヘボウ管のやつはここまでの好演が一転して急ブレーキがかかり、とんでもなくゆっくりしたテンポで歌われて私はいまいち気に入りませんので、もうちょっと軽く爽やかに聴かせてくれるトゥーロフスキー/モントリオール・イ・ムジチ他(Chandos)の演奏を。この弦の美しさはなかなか良いです。他にもポリャンスキイ/ロシア国立交響楽団(Chandos)やロジェストヴェンスキー/ロッテルダムフィルハーモニー(RCA)などの録音があるようですがこれらはまだ聴いていません。特に後者は彼の愛弟子で、独ソ戦の中義勇兵として若い命を落としたユダヤ人作曲家ヴェニアミン・フレイシュマンの遺作オペラ「ロスチャイルドのヴァイオリン」(ショスタコーヴィチ編)が併録されているということで非常に興味はあるのですが。
第1曲目のところで取り上げた「驚くべきショスタコーヴィチ」(S.ヘーントワ著 亀山郁夫訳 筑摩書房)の第1部は、彼の交響曲第13番「バビィ・ヤール」の初演までのすったもんだを素材として(ちなみにこの交響曲の主題はエフトシェンコの詩による、ドイツ軍によるユダヤ人大虐殺が行われたウクライナの村、バビィ・ヤールのことを取り上げています)、ショスタコーヴィチとユダヤとの深い結びつきを語っています。
( 2006.03.01 藤井宏行 )