大ドームのある聖なるケルンの街は聖なるラインの流れの波間に影を映している。ドームには金の革に描かれた肖像がある。僕の人生に光を投げかけてくれた。聖母の周りには花や天使が漂っている。瞳も唇も頬も愛するあの人に似ている。
激しい後奏が続く。苦しみにもがくように。
第9曲 あれはフルートとヴァイオリン
フルート、バイオリン、トランペットの音が聞こえる。あれは私の愛した恋人の婚礼の踊りだ。天使たちのむせび泣きが聞こえる。
天使は何を泣いているのだろう。詩人の苦しみに涙を誘われてか。
第10曲 あの歌を聞く時
昔、彼女が歌っていた歌が聞こえると、僕の心は張り裂けそうになった。何かに駆り立てられるように森の高みに上がると、涙があふれでた。
婚礼での彼女の歌だろうか。聞いてられなくて駈けだしたのだろう。この曲では悲しみは静かに歌われる。
第11曲 若者はおとめを愛し
ある若者が無するに恋をした。娘は別の男を選んだ。その男はまた別の女に恋をして結婚した。娘は怒って行き当たりの男と一緒になった。これは昔話だが今も繰り返される。
正に昔話と同じことが起こったのだろう。外から自分を見ているよう。
第12曲 明るい夏の朝に
光輝く夏の朝、僕は庭を黙々と歩いていた。花はささやき合い、気の毒そうに僕をこみつめた。花は「私たちのお姉さんを悪く思わないで」
美しいピアノの後奏がついた曲。後奏は最終曲の後奏で再び現れる。花のささやいている言葉の意味がよく分からない。
第13曲 夢で僕は泣いた
墓に入った恋人の夢、裏切った恋人の夢、誠実だった恋人の夢と遡っていく。
彼女は死んだのだろうか、客観的な回想が始まっているよう。歌は朗誦される。
第14曲 夜ごとの夢で
毎晩夢の中で彼女に会う。彼女は優しく迎えてくれるが、悲しそうに頭を横に振り、僕に糸杉の枝をくれる。目が覚めると糸杉はなく、聞いた言葉も忘れている。
糸杉は柩の象徴だそうだ。どう理解すればよいのか。
第15曲 昔話の中から
昔話にある苦しみのない国の話を歌っている。その国を夢をよく見るが、目が覚めるとそれがはかない泡のように消え去ってしまう。
昔話の国はカール・ブッセの詩の幸い住む土地や若山牧水の寂しさの果てなむ国を思い出させる。もう自分の道を歩み始めていると思う。
第16曲 いまわしい思い出の歌
ハイデルブルクの樽よりも大きな棺桶を、マインツ橋より大きな棺台を持ってこい。ケルンドームのクリストフより力持ちを12人連れてこい。この棺桶に僕の恋の体験・愛と苦しみを入れ、大きな深い海に沈めよう。
悲しみとの決別の歌といえよう。失恋の大きさを表している。長い後奏が続く。