詩人の恋の曲紹介

   詩人の恋の16曲を紹介します。レコードに入っている解説のハイネのドイツ語詩とその訳を読みながら適当に縮め、感想を勝手に付け足したりしています。その点を踏まえてお読み下さい。
一般に第1曲から6曲は恋の喜びを歌った歌、第7曲から14曲は失恋の苦しみ・悲しみを歌った歌、第15、16曲は過ぎ去った過去を回想する歌と言われている。

   MIDIで各曲を紹介しようと思っていますが、作成に苦戦しています。作成技術の不足で思ったように鳴ってくれません。

第1曲 美しい5月に
   美しい5月に蕾はみんなふくらむ。僕の心にも恋が芽生えた。美しい5月に鳥達はみんな歌い、僕は彼女に憧れと願望を打ち明けた。
繊細なピアノに伴われた曲。

第2曲 僕の涙から
   僕の涙からたくさんの花が咲きでる。僕の溜息はナイチンゲールの合唱となる。かわいい子僕を愛してくれるなら、この花をみんなあげよう。君の窓辺にナイチンゲールの歌を響かせよう。
静かな曲。

第3曲 ばらに、ゆりに、はとに
   薔薇も百合も鳩も太陽もみんな好きだった。今はただ一人彼女が好き。彼女自身が薔薇であり百合、鳩、太陽なのだ。
速い快活な歌。

第4曲 君のひとみを見つめる時
   君の瞳を見つめると悩みも苦しみも消えていく。君の口にキスをすると僕は元気になる。君の胸にもたれると天に昇る気持ちだ。君に「あなたが好き」と言われると、激しく泣いてしまうだろう。
語るように歌われる歌。最後の泣いてしまうのは何を示しているのだろう。

第5曲 僕の心をひたそう
   僕の心を百合の花の奥にしまおう。百合は彼女の歌をひびかせるだろう。その歌は人々の心を揺り動かす。かつて、僕に甘い時をくれた彼女の口づけのように。
流れるような美しい曲。詩の最後の節は昔のことのような表現で、今はもうその状態にないかのように感じる。

第6曲 聖なるラインの流れに
   大ドームのある聖なるケルンの街は聖なるラインの流れの波間に影を映している。ドームには金の革に描かれた肖像がある。僕の人生に光を投げかけてくれた。聖母の周りには花や天使が漂っている。瞳も唇も頬も愛するあの人に似ている。
大聖堂の荘厳さを表すような伴奏と歌から始まる。彼女に似ている聖母像見て何を思うのだろう。彼女の面影を他に求めなければならないのか。

第7曲 僕は恨むまい
   恨みはしない。永遠に失われた恋人よ。夢の中でおまえがどんなに不幸かを見たのだ。恨みはしない。
心が爆発するような激しい曲。失恋の現実を前に必死におまえを恨みはしないと言い聞かせているよう。

第8曲 花が知ったなら
   花がナイチンゲールが星が僕の悲しみを知ったら、それを癒してくれるだろう。でも誰にも分からない、僕の苦しみを知っているのはただ一人だけ。
激しい後奏が続く。苦しみにもがくように。

第9曲 あれはフルートとヴァイオリン
   フルート、バイオリン、トランペットの音が聞こえる。あれは私の愛した恋人の婚礼の踊りだ。天使たちのむせび泣きが聞こえる。
天使は何を泣いているのだろう。詩人の苦しみに涙を誘われてか。

第10曲 あの歌を聞く時
   昔、彼女が歌っていた歌が聞こえると、僕の心は張り裂けそうになった。何かに駆り立てられるように森の高みに上がると、涙があふれでた。
婚礼での彼女の歌だろうか。聞いてられなくて駈けだしたのだろう。この曲では悲しみは静かに歌われる。

第11曲 若者はおとめを愛し
   ある若者が無するに恋をした。娘は別の男を選んだ。その男はまた別の女に恋をして結婚した。娘は怒って行き当たりの男と一緒になった。これは昔話だが今も繰り返される。
正に昔話と同じことが起こったのだろう。外から自分を見ているよう。

第12曲 明るい夏の朝に
   光輝く夏の朝、僕は庭を黙々と歩いていた。花はささやき合い、気の毒そうに僕をこみつめた。花は「私たちのお姉さんを悪く思わないで」
美しいピアノの後奏がついた曲。後奏は最終曲の後奏で再び現れる。花のささやいている言葉の意味がよく分からない。

第13曲 夢で僕は泣いた
   墓に入った恋人の夢、裏切った恋人の夢、誠実だった恋人の夢と遡っていく。
彼女は死んだのだろうか、客観的な回想が始まっているよう。歌は朗誦される。


第14曲 夜ごとの夢で
   毎晩夢の中で彼女に会う。彼女は優しく迎えてくれるが、悲しそうに頭を横に振り、僕に糸杉の枝をくれる。目が覚めると糸杉はなく、聞いた言葉も忘れている。
糸杉は柩の象徴だそうだ。どう理解すればよいのか。

第15曲 昔話の中から
   昔話にある苦しみのない国の話を歌っている。その国を夢をよく見るが、目が覚めるとそれがはかない泡のように消え去ってしまう。
昔話の国はカール・ブッセの詩の幸い住む土地や若山牧水の寂しさの果てなむ国を思い出させる。もう自分の道を歩み始めていると思う。

第16曲 いまわしい思い出の歌
   ハイデルブルクの樽よりも大きな棺桶を、マインツ橋より大きな棺台を持ってこい。ケルンドームのクリストフより力持ちを12人連れてこい。この棺桶に僕の恋の体験・愛と苦しみを入れ、大きな深い海に沈めよう。
悲しみとの決別の歌といえよう。失恋の大きさを表している。長い後奏が続く。