新勤評反対訴訟

「大阪府教育委員会及び大阪市教育委員会による『教職員評価・育成システム』とその評価結果を給与に反映することの違法性を教育基本法に問う」訴訟

大阪・新勤評反対訴訟
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大阪市の教職員「評価・育成システムに関するアンケート」より(2)


システムは「意欲と資質向上、学校活性化には役に立っていない」と教職員は7割弱が否定的評価。
校長でさえ意見が割れて、積極評価は約半数にすぎない。
大阪市の教職員「評価・育成システムに関するアンケート」より(2)

  ** 転送歓迎  **    2010年10月25日


 新勤評反対訴訟団事務局の吉田正弘です。大阪市の「評価・育成システムに関するアンケート」についての紹介、第2弾です。
 前回はアンケートのうち評価結果の給与反映の部分を取り上げ、教職員だけでなく校長も同様に8割以上が給与反映によっては意欲や資質向上につながらないと見ていることを紹介しました。今回は、「評価・育成システム」が教職員の育成や学校の活性化(これがシステム本来の目的です)のために役立っているかをとり上げます。

(1)システムは「意欲・資質向上につながっているか」(Q1-2)について、
①校長は?
 「よくつながっている」と積極的に評価しているのは、わずか4.8%です。「つながっている」を加えても、かろうじて半数を越える55.5%にすぎません。反対に、否定的評価は43.4%もあります。さらに校種別で見ると、中学校校長では49:51と否定的に見る人の方が多くなっています。
②教職員は?
 否定的評価が非常に多くなっています。約7割弱が「意欲・資質向上につながっているか」という設問に「つながらない」「全くつながらない」と答えています。

(2)システムは「教育活動の充実及び学校の活性化につながっているか」(Q1-3)について、
①校長は?
 56%が「よくつながっている」「つながっている」という肯定的評価を、44%が「あまりつながっていない」「全くつながっていない」と否定的評価をしており、意見は二つに分かれています。しかし、「よくつながっている」という強い肯定はわずか4.0%にすぎません。
②教職員は?
 69.4%という圧倒的多数が否定的評価をしています。「全くつながっていない」という強い否定は、22.2%もあります。教職員はこのシステムが掲げている目標(意欲、資質向上、学校活性化)とつながるものではないと厳しい見方をしているのです。

 評価され育成される側の教職員の7割近くがシステムが育成という目標に役立っていないと受け止めている(要するに自分の育成には役立っていない、負担になるばかりだ)と考えるシステムは、とうていまともなシステムとは呼べません。このシステムは府教委がごり押しで現場に押しつけているだけで、教職員の育成、資質向上や学校活性化にはほとんど役立っていない、少なくとも教職員はそんな実感を持っていないし、校長ですら意見が分かれているということが見えてきます。本来の目的に適さないものを、無理矢理現場に押しつけることでどんな混乱と被害を学校に押しつけているか教育委員会は考えるべきです。

(3)「学校目標の共有につながっているか」(Q1-1)について
①校長は?
 72.2%が「よくつながっている」「つながっている」と肯定的です。
②教職員は?
 意見が割れており、52.7%が否定的。46.1%が肯定的です。
※府教委はこの数字を取り上げて「共有につながっているから役立っている」というような詭弁的な解釈をするかもしれません。しかし、校長が「学校教育目標」を教職員に提示し、それに基づいて個人の自己目標を立てさせているのですから、ある意味共有の度合いが高くなるのは当然です。問題は、肝心の学校教育目標を誰が立てるのかということで、校長が勝手に決めるのか、それとも教職員全体が保護者や生徒・児童の意見を聞きながら議論して決めるのか、なのです。私たちが裁判で問題にしたように校長が勝手に決めていく現状では、共有につながるということは行政による教育の不当な支配が行われているということに他なりません。
 
(4)「自己申告票が、仕事の成果の把握や、目標の達成に向けて取り組むことに役立っていると思いますか」(Q3-1)について。教職員の半数を超える55.1%が「あまり役立っていない」「全く役立っていない」と答えています。
 同様に「面談が教職員の意欲・資質の向上等につながっていると思いますか」(Q4-1)についても、教職員の57.3%が否定的な回答をしています。自己申告票も面談も目標管理型の評価・育成システムでは最重要のツールとされていますが、いずれも半数以上の教職員から役に立っていると思われていないのです。
 また、システムが客観的で公平なものと受け取られているかという問題についても、Q2-3で「評価の公平性・客観性・透明性をより向上するためには、どのような改善を行うべきだと思いますか」に校長の91.2%、教職員の81.3%が「評価基準をよりわかりやすくする」と答えています。校長も教職員も圧倒的多数が現在の評価基準が「わかりにくい」「目に見えない」と感じていることを反映した答となっています。

 給与反映だけでなく、本来の目標の達成についても「評価・育成システム」は役立っているとは大半の教職員は考えていません。府教委はアンケートで明らかになった問題点に真正面から向き合い、即刻「評価・育成システム」と給与反映を廃止すべきです。
(続く) 

**大阪市の開示したアンケート結果の一覧表(総括表)を新勤評反対訴訟団のWEBサイトに掲載しますので、関心をお持ちのかた、他府県のかた、是非ご覧下さい。
訴訟団webサイト http://www7b.biglobe.ne.jp/~kinpyo-saiban/index.html

吉田正弘
e-mail masayo@silver.ocn.ne.jp