新勤評反対訴訟

「大阪府教育委員会及び大阪市教育委員会による『教職員評価・育成システム』とその評価結果を給与に反映することの違法性を教育基本法に問う」訴訟

大阪・新勤評反対訴訟
子ども・教職員・学校を競争と点数の重圧で押しつぶすな!
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大阪市の教職員「評価・育成システムに関するアンケート」より(1)


大阪府が、教職員評価制度を強化し改悪する口実を求めてアンケートを実施
逆に、校長も教職員も80%以上が「評価結果の給与反映に反対」と回答

大阪市の教職員「評価・育成システムに関するアンケート」より(1)
  ** 転送歓迎  **    2010年10月23日


 大阪の新勤評反対訴訟団事務局の吉田正弘です。大阪府が「評価・育成システム(新勤評)」改悪のために集めたアンケートのうち大阪市教委の分が開示されました。下に紹介するように、このアンケートは改悪に利用してやろうという府教委の思惑を越えて校長も含めた現場からの反発と憤激の声を反映したものになっています。アンケートの各設問に付属する記述欄にはシステムに対する教職員の不満や批判だけでなく、評価をさせられている校長の苦しい胸の内が率直に書かれています。「評価の明確な基準がなく納得を得られない」「教職員との関係がギスギスする」「協力してがんばっているのに差を付けると意欲が失せる」「目立つことしかしない教員が増えてきた」等々。現場で教職員を評価する校長が評価結果を給与反映することに反対している事実が、府教委自身の調査で明らかになったのです。
 府教委は来週にも改悪案を公表(同時に大阪府分のアンケート結果公表)するつもりのようです。ぜひ、府教委に新勤評改悪と給与反映に反対し、制度廃止を求める、「大阪府の教職員評価育成システムと給与との連動を今すぐ中止すること。」「現行の教職員評価・育成システムを廃止し、教職員育成のあり方を全面的に見直すこと。」「まず、制度改悪への動きを全面的に中止すること。」などの内容のメール・FAX・電話などの行動を起こしてください。
 【抗議・意見送付先】大阪府教育委員会 教職員企画課企画グループ
  電話:06-6944-9374 FAX:06-6944-6897
  メール http://www.pref.osaka.jp/kyoshokuink/の「お問い合わせはこちら」から。

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 橋下大阪府知事は「がんっばている者が報われる」ようにする、と教職員に対する成果主義と給与格差を一層拡大させる方針です。給料の差を広げさえすれば教職員は橋下の言うことを聞いて必死で働くだろうとでも思っているのでしょう。大阪府教委は4月以降「評価・育成システム」と評価の給与反映をさらに悪いものにするために政策化を進めてきました。このシステム改悪の為に「名目」として実施したのが「評価・育成システムに関するアンケート」です。
 このアンケートは①校長・教育長は全員を対象にするのに、教職員はわずか5%だけの抽出という非常に偏った調査です。②質問項目はシステムの検証ではなく、府教委の都合のいい恣意的なものにすぎず、例えば「評価結果の給与反映も手当への反映もやめる」とか「システムを廃止する」という選択項目はありません。③一次評価者である教頭まで「教職員」に含めるうえ、該当者はコンピュータで無作為に選んだと言いながら職種別の内訳を調べさえしないという杜撰なものです。極めて恣意的でシステム改悪すすめる裏付けをとろうという政治的目的が明白なものでした。私たちはこれらを批判し、教職員全員の意見を聞くべきだと府教委に申し入れてきました。

 しかし、それにもかかわらず校長と教職員に対するアンケートの結果は「評価・育成システム」と給与反映に教職員だけでなく校長も強く反対していることを明らかにしました。府教委の思惑を越えて強い反対があるのです。
 大阪府は九月中には結果をまとめているのに公表しません。いつまでも引き延ばしています。きっと反対意見の強さに困惑しているのでしょう。
 しかし、大阪市教委は大阪府教委に結果を報告した後でデータを開示しました。新勤評反対訴訟団は千人分(うち校長477人)のアンケート用紙の開示を求め、独自に入力、分析しました。(その後、大阪市はアンケートの電子データも開示しました。)

 アンケート結果に表れた特徴の第一は、橋下知事が進める成果主義の強化=「がんばった者が報われる」が教職員の意欲や資質向上に全く役立っていないという事があきらかになったことです。校長も含めた教職員の大半が給与反映の拡大に反対し、縮小・廃止を望んでいます
 Q5-1で「評価結果の給与反映が意欲や資質向上につながっているか」に対して、「あまりつながっていない」「全くつながっていない」と否定的に答えたのが、校長で81.7%、教職員で83.7%です。給与反映すれば意欲や資質向上になる、さらに成果主義を強めようという府教委の考えに校長も教職員も8割以上が否定的な態度をとっています。
 Q5-6で「意欲向上と組織の活性化のために給与反映をどのように改善すればいいか」についても、府教委が望む「メリハリを大きくする」、と答えたのは校長で22.9%、教職員では11.9%とごく少数です。これに「現状のまま」を加えても、校長で29.8%、教職員で23.8%と少数にすぎません。府教委の考えに賛同する人は校長、教職員ともごく少数であることが分かります。
 逆に、校長の54%が評価結果のSABCDの5段階のうち「結果反映はC、Dのみ減額でいい」を選び、SAB評価で給与にに格差を付けることに否定的です。また、「昇給(給料)への反映を無くす」を27.7%が選んでいます。教職員も同様ですが、「昇給も手当も反映をなくす」という項目がなかったので、25%がその他を選び、多くの人が給与反映の廃止、制度廃止を書いています。校長も、教職員も現在の評価制度で給与の差を付けるのは困難で、それを続ければ教職員の意欲を低下させるので、止める方向に進むべきだと考えているのです。
 各設問に付属する記述欄にはシステムに対する教職員の不満や批判だけでなく、評価をさせられている校長の苦しい胸の内が率直に書かれています。「評価の明確な基準がなく納得を得られない」「教職員との関係がギスギスする」「協力してがんばっているのに差を付けると意欲が失せる」「目立つことしかしない教員が増えてきた」等々。現場で教職員を評価する校長自身が評価結果を給与反映することに大きな疑問を感じているのです。
(続く)

 なお、大阪市の開示したアンケート結果の一覧表(総括表)を新勤評反対訴訟団のWEBサイトに掲載しますので、関心をお持ちのかた、他府県のかた、是非ご覧下さい。

吉田正弘
e-mail masayo@silver.ocn.ne.jp