訴訟団結成総会開かれる!

2006年10月21日、「給与反映の違法性を教育基本法に問い、自己申告票未提出による懲戒的不利益処分の差し止めを求める裁判」(略称「新勤評反対訴訟」)の「訴訟団」結成総会が大阪の地で、80名の教職員、市民の参加を得て成功裡に開催されました。

まず、呼びかけ人の代表が経過報告を行いました。ここで強調されたのは実に「むつかしい」状況下で裁判が開始されようとしていることです。それは当の教育基本法改悪案の審議終了を宣し、与党が11月初旬にも採決しようという緊迫した事態を指しています。それでは訴訟はどうなるというのか。しかし、今やらなければ現行法10条、6条のかけがえのない意味をなくすことになりかねません。手をこまねいて見ているわけにはいかないのです。

「教育再生会議」がスタートしました。また自民党は「国家戦略としての教育改革」を唱え義務教育における「教育改革」を進めようとしています。そこで唱えられているのは全国学力テストと一体となつた学校評価であり、教員評価です。教員が与える教育に強制を働かせるということです。とりあえず待つという選択はありません。職務命令もでかねぬ状況で何とか怒りを組織できないでしょうか。

大阪の教員評価・育成システムは様々な問題点があるのに政府の動向にあわせるかのようにスケジュール的に強行されてきました。異議申し立てについてもまともな審査さえなされず、結局大阪では未提出率は5%(一部8%)、しかし2000人の人々が不提出となっています。どこかで声をあげざるを得ません。その際根拠となるのは長野勤評訴訟の最高裁判決です。東京では「日の丸・君が代」予防訴訟で画期的な地裁判決が出ました。行政訴訟を貫徹させようという意味ではこの裁判は同じ意味を持つのです。概ね以上のような経過報告がなされました。

次に弁護団を代表して立った弁護士は、訴状骨子の主な特徴点をかいつまんで述べられました。一番の論点は、評価育成システムそのものが教基法全体に「あわない」のではないかということです。以前から論じておられたのは、教員が「我が校の目標」・数値目,標に則して目標を立てた場合、それ以外もある具体的な教育活動から切り離され、現実に被害を受けるのは子どもたちとなり、これは10条違反ではないかということでした。その後論議は、例えば「学校を明るくしましょう」といつた一般的な目標であっても、教員を管理し評価している者が出す目標に従うのは10条違反のみならず、あわせて6条2項違反にもなるのではないかという所にまで進みました。教員は「全体の奉仕者」です。一方の子どもの問題に専念すれば高く評価され、もう一方の子どもの問題に関われば低いというのは明らかにおかしいのです。そして6条は1条にも3条にも関係してくるということです。ここで氏は韓国では高い評価を受け他より給与の多かったものはその分返納するという興味あるエピソードを紹介されました。次いで苦しんで申告票を提出した人々のために民事訴訟をあわせて考えることを再度強調されました。

さらに万が一教基法が改悪された場合でも「教育は不当な支配に服することなく」という文言は残されているのであり、行政の不当な支配はありえるという最高裁判決は変わらないのだから、私たちの主張が禁止されるのは憲法違反だ、ということで闘えるのではないかという指摘をされました。何よりも「教育の特質」は不変である以上、上意下達の教育しか残らないことが明らかになれば「勝ち」ということです。

そして「学校教育」の特質ということです。何より「共同作業・共同責任」の上に学校教育は成り立つということです。これについては現場からの積極的な主張を弁護団に寄せてくれということで話を終えられました。

議事は規約、人事案の提起に移りました。共に満場の拍手で承認され、原告団長、原告副団長、事務局長以下原告団、支える会の役員が決定しました。質疑で、大阪市教委を被告に加える必要があるのでは、との指摘がありましたが、評価育成システムの計画は大阪府教委が統括するのであり、府教委に一本化できるとのことです。

その後、高校、義務制を代表してそれぞれ一名ずつの「原告からのアピール」がなされました。発言の詳細は省きますが、両名が強調されていたのは、何よりさまざまな意味で「信用できない」管理職に評価されることのやりきれなさであり、ことに義務制の方の発言はむしろ組合の側がこぞつて申告票を出す中で未提出を貫くことの困難さでした。この裁判で「方向性」が示されたという発言は参加者を大いに励ますものでした。司会者からの「メッセージ紹介」は、同じく参加者に勇気を与えるものでした。

次いで参加者からの発言の時間が持たれ、計6名の方の発言がありました。教基法に盛られた「個人の尊厳」という原理を大切にしたいこと、システムによつて大多数の教員が従順になつていく恐ろしさを一大教育運動ではねかえしていきたい、教育内容まで歪める教員評価やシステムの恐ろしさを市民に理解してもらう必要がある、「教育と軍事はゆずれない」、システムは現場でものを言えない人を一層卑屈にさせている、大阪市では各学校で一人平均が不提出である、何とか広がりのある運動としたい、といつた発言が続きました。いわば会場からの発言の締めくくりとして、訴訟団結成の出発の決意として出された事務局声明(案)は、圧倒的な会場の声に押され、総会での承認文書ということになりました。

これらを承けて原告団団長から挨拶がなされました。それは様々な困難な中で「闘わなければならない、闘わざるをえない」という力強いものでした。これまで培われてきたはずの大阪の教育の伝統、切り捨てられる子どもを作らない伝統の上に、東京等の闘いと連帯しつつ、裁判への結集を勝ち取っていこうというものです。これらを具体化すべく事務局から11月初旬の提訴を目指し、特に義務制の原告を増やすべくお手伝いを願いたいという行動提起がなされました。そのための、「支える会」への入会案内、原告への「手紙」が準備されています。第一次訴訟原告の締め切りは11月6日です。最後に「団結がんばろう」を唱和し、結成総会は終了しました。ここに、裁判に向けた闘いの第一歩が刻まれました。