新勤評反対訴訟団の結成にあたって(事務局長)

大阪府教育委員会は、今年6月東京や広島に次いで、校長による「教職員評価」をその次の年度の給与に反映する制度の導入を決定しました。教職員を5段階で「評価」し、低い評価を受けた教職員の給与を引き下げ、その資金を高い評価を受けた教職員に振り分けて厚遇するという制度です。

安倍晋三内閣は、「教育再生」を最重要政策として掲げ、教育に関わるすべての権限を国家が掌握する教育基本法「改正」の成立を今国会にも強行しようとしています。首相官邸に設置した「教育再生」会議は、まさに「教員評価」と「学校評価」制度の確立、「教員免許法改正」を審議し具体化するスケジュールまで公表しています。「再生会議」が具体化しようとしているのは、一言で言えば、「競争に生き残れない学校はつぶせ!」「競争に貢献しない教員を追い出せ、免許を剥奪せよ!」という制度です。

学校現場は、政府・文部科学省による「教育改革」の迷走と教員統制強化、日教組運動の後退の下で、労働密度の濃密化、昼食も休憩もまともにとれない秒単位・分単位のスケジュール、極度の多忙化と労働時間の延長、自宅への仕事の持ち帰りの日常茶飯、夏休みも祝祭日もない部活の連続、週5日制の超過密カリキュラム等々、労働強化地獄の中で疲れ果てています。このような異常な長時間労働と超過密労働は、教員に異常なストレスを強いることとなり、精神疾患を増大させ、自殺、過労死、若年・早期退職、病気休職を激増させています。「教員評価」「学校評価」「教員免許法改悪」によるサバイバル競争をさらに学校と教職員に強要することは、学びあいの場としての学校を死滅させるということです。「効率優先」と「競争至上主義」の学校で、時間をかけて子どもたちと向き合うことはできません。

東京大学の佐藤学さんは、著書「学校の挑戦~学びの共同体を創る」(2006年小学館)で、次のことを強調しています。「学校は内側からしか変われない。そして学校を内側から変える最大の推進力は、教師たちが専門家として育ち連帯し合う同僚性の構築にある。」

教職員への「評価」と「競争」、「差別・選別」と「排除」の徹底は、学校現場から同僚性と協働性を奪い、学校が「学びの共同体」として発展する道を完全に閉ざしてしまいます。校長を頂点とする専制支配体制がいっそう強化され、学校の民主主義は破壊されることになるでしよう。これは、やがて、すべての子どもたちに平等に保障されている「教育を受ける権利」を、子どもたちの手からもぎ取っていきます。

私たちは悩み抜いた末、今回「自己申告票」提出義務不存在の確認を求め、府教委が「要領」として確定した「自己申告票」不提出者に対する懲戒的不利益処分の差し止めを求める集団行政訴訟(略称:新勤評反対訴訟)を起こすことを決意しました。私たちは、この裁判を通じて、「自己申告」の強制及び給与反映の違法性を教育基本法に問い、微力ながらでも、政府による不当な教育支配の流れを押し戻すために立ち上がりました。

10月21日、訴訟団(原告団及び訴訟を支える会)の結成総会を行いました。国会情勢にもよりますが、 11月上旬を目途に提訴することにしています。

多くのみなさんのご支援とご協力をお願いします。