ある夏の日、広瀬川の上流に釣りに行って来た。
林道の入り口には、釣り人の車が進入出来ないように、ガッチリとした木の扉があり鉄のチェーンで鍵が掛かっていた。
扉の入り口の広場には、もう一台の四輪駆動車が駐車していた。
釣り人の車でなけりゃあーいいなぁーと思いながら・・・、胴長を入れたリックサックを背負い、
軽いスニーカー靴で長い林道を釣り場に向かって歩いた!
初夏とは言え、ギラギラとした太陽の光が体中を熱く熱く温度を上げてきた!
しばらく歩くと、30センチほどの太さに育った楢の木の所にたどり着いた。
やれやれ、持っていった冷たいお茶で喉を潤し、支流が注ぐ、漁場までまた歩き出した。
その支流の入り口の崖に辿り着くと、胴長に履きなおし、ヒンヤリとした渓流に四つん這いになって崖を降りた。
やがて沢に降りると、冷たい冷たい沢の水が、熱くなった足の裏を冷やしてくれた。
いやぁー、気持ちが良い、体全体が冷えてきた。
釣りの準備をして、支流に分け入った。ちょうど良い深みがあり、糸を流し込んだ、キラリと餌を追う魚の影、うん、山女魚だな。
竿をあわせたら、餌をとられて逃げられた。姿からすると20センチ程。うん、この沢に釣り人が入っていないのかも・・・・。
そんなこんなと、釣り進み、何匹かの山女魚と岩魚を釣った。
でも、何時もなら釣れる筈の場所では釣果がない、しばらく行くと、フェルト靴で濡れた石が点々とあった。
ありゃぁー、あの四駆の人の足跡だぁー。
やる気の情熱が吹っ飛んだ。
でも、釣果はある、あのやつ初心者だな・・・ !
やがて支流の終わりの滝に差し掛かった、何時もなら、数匹は釣れるはずが、ちっとも当たりが無い。
でも、何処かに釣り残しがあるはずと、丁寧に岩の淵に滝の風に乗せて釣り糸を落とした。
グイグイと引かれる釣り糸と目印、竿の先端が半月ののように曲がった。
こちらに竿を寄せようとするが、中々こちらに来ない、滝の底にグイグイと引かれ、竿は満月のごとく曲がった。
魚との闘い、3分、いやっ、8分か?なっ。ついに、27センチの魚が顔を水面にあげた。岩魚だ!主だ!

家に辿り着き、刺身にしようとしたが、疲れでサバク気力がない。塩焼きの魚に飽きが来たので、油で揚げてラッキョ酢に浸けてくれた。
うん、美味しい、美味しい。ラッキョ酢につけると、三日は食べられる。

どうも裏口からガタガタと音がしている。長女がやって来た様だ。
親父に見られないように、裏口から家に入ったみたいだ。 
母と娘の会話が台所から聞こえる。
ラッキョ酢に浸けた岩魚を食べるかい。
「うん、帰り、塩焼きにする岩魚欲しいなっ」
「パパ、岩魚二匹貰っても良いかなぁー」
「ああ・良いよ」

こんな釣り、何歳まで出来るのやら、今日は筋肉痛のようだ・・・。
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