2013年6月19日から30日まで、小手指(埼玉県)の
ギャラリー・ウシンにて、『BOOK展・伝えたい物語たち』という
展覧会を行いました。
ギャラリーの看板には、案内葉書の絵が
飾られています。小野寺美樹さんの作品。
メアリー・ポピンズがイメージされた絵で、
傘の花が咲く6月という季節と、
初夏のさわやかな風を思わせる看板。
実際のポピンズの話は、東風吹く、
寒い時期の物語で始まっています。
絨毯の生地で作られた大きな鞄を持ち、
コウモリ傘をさした厳格な女性が主人公。
ギャラリーを入るとすぐに、
古いトランクからはえた“物語の木”に
出会います。葉っぱが付箋になって
いるので、来場者が自分の大切にして
いる一冊の名前を書いて、木に貼り
つけられます。 写真は開催前のもの
だから、まだ茂っていませんが、
期間中にはたくさんの葉が寄せられ、
心を育てた大切な本が、それぞれに
あるんだなぁと改めて思いました。
私の知らない本も、いくつかありました。
読んでみたいな。
窓際にずらりと並んだ名作
全集は、うちから運んできたもの。
たぶん40年以上前の本です。
当時は、こういう本が子どもの
いる家庭には並んでいたような
気がします。来場者の中にも
「これと同じ本を持っていた」という
人も。
本の前で、本の番人として
存在感たっぷりなウサギさんは、
松田富美子さんの作った
『不思議の国のアリス』に出てくる
白ウサギ。ちゃんと懐中時計を
持っていて、正装がバッチリきまって
います。 不思議な時計の作用で、
このギャラリーに来た人は、誰でも、
世界の物語にわくわくした“子ども”に
戻れるのです。
夢中で本を読んで、お腹が
すいてきたら、ギャラリーでは
カフェも併設しているので、
本を持ったまま、お食事や
お茶を楽しむことが出来ます。
でも、このケーキは食べられ
ませんよ。いくら美味しそうでも、
フェルトで出来ているんですから。
メアリー・ポピンズは、
イギリス女性らしい堅実な性格。
労働条件を事前にしっかり交渉し、
子どもたちの養育係りになっても、
決して甘い顔を見せません。
それでも、子どもたちから愛される
のは、彼女が子どもの心を忘れ
ないから。子どもたちの「楽しい」
「嬉しい」ことを、ちゃんと知っていて、
そういう出来事に触れさせるように
導いていきます。
そんなスーパーウーマンですが、
「もう若いとは言えないお嬢さん」と
言われ、がっくりくるところなんかは、
普通の女性らしくて可愛い面も。
みつばちマーヤは、少女ながら
故郷を捨てて、冒険に出るくらい
なので、勝気な子。クモの巣に
つかまっても、決して引き戻ろう
とはしません。どんな虫たちと
出会おうが、「やっぱりミツバチは
最高!」と思うほど、プライドが
高く、ミツバチの世界を愛している
女の子。最後は故郷で円満に
暮らすのも、もっともですね。編み
人形は、菊地ゆかさんの作品。
青い鳥は幸福のシンボル。青い鳥
探しの旅の果て、見つけた場所は、
自分のすぐそばだったーーーという
ストーリーをご存知の方は多いでしょう。
でも、原作はその後、鳥が窓から
逃げてしまって終わりです。
旅を続けた少年が、逃げた鳥を追うの
ではなく、「今度は僕がつかまえてあげ
るよ」と、少女を慰めるところに、
成長した男の子の“自信”がこもって
います。
青い鳥と題した映画や音楽は、日本
にはたくさんありますが、ここでは
メルヘンティックなタイガースの歌詞を
紹介しています。
ピノキオは素直な木彫り人形なんです
が、誘惑に弱く、悪い友だちにそそのか
され、次から次へと困ったことを起こし
ます。失敗した出来事から学ぶ、という
姿勢が無いから、同じことの繰り返し。
それでも、最後には、お父さん想いの
良い子になって、本物の人間に変わり
ました。
イタリアの子どもたちは、誰でも子どもの
頃にピノキオを読む(あるいは、読まされ
る)そうですね。ピノキオ公園というのも
あるので、本場の、やけにリアルな
ピノキオ像も写真で展示しています。
ユタとふしぎな仲間たちは、日本の
代表で登場してもらいました。
書かれた時代は、前の4作と比べたら、
新しいですが(それでも1970年代)
劇団四季のミュージカルとしても
有名で、東日本大震災の被災地での
上演が続き、“命の大切さ”を訴えて
います。
仲間と陽気に騒ぐ“わらし”たちは、
大人なのにオムツ姿。それには深い
理由があります。生きたくても
生きることが叶わなかった命が、
私たちに“生きている”ことの貴重さを
教えてくれるのです。
名作のあらすじと、名場面と、
関連エピソードで綴った、本の
楽しさを伝えるための展覧会。
こんな感じで、作品が並んで
いました。
お好きな物語は、あった
でしょうか?
自分の本も置かせていただき
ました。会場でお買い上げくだ
さった皆様、ありがとうござい
ました。
BOOK展では、ささやかなフリー
ペーパーが配布されました。5つの
物語の絵と小さなコメントがついています。
展覧会の思い出に。
6月29日には、私の朗読で『金色の
ベルの秘密』(国土社・はじめての
たんけん より)を聴いていただきました。
物語の重要なアイテム・スナッファーを
オーナーさんが貸してくださり、
雰囲気が大いに盛り上がりました。
貴重な休日なのに、いらしてくださった
皆様、ありがとうございました。