Direct Conversion Receiving Transceiver
2015/05/03
BY BOFU HATTORI
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試作したダイレクトコンバージョン受信方式トランシーバー
出力=0.3W
大きさ W100XH70XD30 タカチYM100
周波数の調整は可変抵抗器で行う。
+5VをVRで可変しADCに入力する。プリセット周波数値は7000kHzである。
ADC値に30Hzを乗じプリセット周波数値に加える。という方法で周波数を変化させる。
ADCのリファレンスが安定しないとドリフトします。
また、最小ビットの不確定さがドリフトの原因となるのでプログラムに工夫が必要です。
アナログのVFO的にトリッキーな仕組みです。
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<きっかけ>
先日ある方とお話している時にダイレクトコンバージョン受信機の話題が出てきました。
昔から各所で引き合いに出される受信方式です。シンプルながらかなりの性能をもつ受信機ができるとの事です。
実はかなり昔に製作したことがあるのですが思っていたほどではなく今ひとつだったように記憶していました。
そんなんで再度製作することはないな。と思っていたのです。
さて、その方が言われるには「夜間、放送波の混信がひどいので使い物にならない」というものでした。
そうです、これは同じ経験があります。
当時製作したものも夜間の放送波の混信は相当なものがありました。「これはダメだな・・・・」という印象です。
これを回避するためにトップに水晶フィルタを入れると改善されるとの事だが上手くいかない。とも仰っていました。
なにか上手な方法はないものなのでしょうか・・・・?
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いろいろと調べなおして見るとダイレクトコンバージョン方式にもいくつかのスタイルがあるようです。
一番多いのが半導体のギルバートセルを使ったDBMで製作されたものです。
代表的なディバイスにはSA621ANなどの製品があります。またこれらの類似品もあります。
このディバイスは消費電力も少なく利得も15dB以上あって手頃です。
ひところ流行ったDual Gate MOSを使ったものはほとんど見られません。
ディバイスが入手難だからでしょうか?
また、BJTシングルのバランスドミクサも参考文献にはあるのですが最近の製作例には皆無です。
ダイオードのDBMの事例はどうか?ということで見てみるとこれまた最近の事例にはないようです。
そうなると、ほとんどの人がICのBJTギルバートセルを使って製作しているようです。
BJTのギルバートセルだと混変調に弱いのか?はたまた、別の理由で素通りが発生しやすいのか?
などとその原因を考え始めてしまいました。
こうなったら作って確かめるしか方法はないな・・・・・
ということで製作した理由がこれです。
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<回 路>
トップのミクサはDiode DBMです。
トランスを自作して手持ちのNECのND871C3と言う昔流行った4本入りショットキーを使いました。
出力にOP AMPのBPFをつなぎそのあとにNJM386BMで増幅します。
局発はDDSで作りました。水晶振動子がなかったからです。
その為少々大掛かりですが帯域をフルカバレージできます。
送信は800Hzプラスして送信周波数とします。
受信するときは信号の下側からビートを取って行きほぼ800Hzになると思しきところで止めます。
これはダイレクトコンバージョン特有の受信信号のビートが上下に出るので必要な同調操作です。
実はこれがこの方式の最大の混信問題となっているのですね・・・。
DDSをつかっているので制御にマイコンを採用します。
AVR ATTINY861Aと言う20PINのものを使いました。
DDS MCLOCKは秋月で安く売られている20MHzの水晶発振器です。SMDで小さく薄型です。
DDSはAD9833です。10PIN SSOPなので変換基板に実装しました。
なぜか実験中にDDSのADCが壊れたので交換しました。時々このような現象に見舞われます。
DDSの出力側には必ずLPFもしくはBPFが必要です。
何故かは出力をスペアナで眺めると合点が行きます。原理的にもそうですね。
DDSの出力は-19dBmでした。少々小さい感じです。AD9834では-12dBmあったのでその程度を予想していました。
これを一段で23dBほど増幅して+3dBm位にします。
この増幅段は飽和するまで増幅してはいけません。
本来出力側にもLPFを設けないといけないのですが省いています。
なので高調波をあまり出さないようにリニアな部分で増幅するようにしています。
この出力はそのまま受信の局発と送信のファイナルに切り替えて接続されます。
送信のファイナルは昔取った杵柄の2SC2053で出力は+25dBm(300mW位)です。
回路図はこちら
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内部の様子:
基板(72mmX47mm)はこれだけ左に見えるDIPはマイコン
下に垂直になっている基板がAF PAでJUNK基板を使った。
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<完成>
1週間くらいで完成しました。
早速、感度を測ってみました。
FR=7013kHz
10dB SNR=-93dBm
ということで、高感度とは無縁です。
それでもアンテナを繋いで聞いてみると結構がんがん聞こえてきます。
皆さん強力だということが判りますね。
AF BPFの効き具合は裾野が広くシャープな感じはしません。
しかし、測ってみるとピークは鋭く20dB近くの急峻な特性を持っていることがわかります。
BPFの中心周波数はほぼ800Hzでした。
さて、夜間の混信は如何なものなんでしょうか?
夜になるのを待って受信してみました。アマチュアバンドの信号が相変わらず賑やかに聞こえてきます。
放送波のものと思われる混信はありません。DBMについている7MHz BPFをスルーにしてみました。
僅かに混信が聞こえますが問題にはなりません。ためしにDBMの出力をピンセットの先で触れてみます。
盛大に放送が入感します。これはBC帯のものです。
混信の多くはフロントエンドの構成によって大きく変化するもののようです。
Diode DBMはBC帯に対するインピーダンスが低いのでフィードスルーが少ないようです。
また7MHzの上にある短波帯の放送波はDiode DBMのHi IPのおかげで逃れられるようです。
しかし、Diode DBMだとちょっとゲイン不足な感じです。とはいってもRF AMP追加などもっての外でしょう。
この手の機器は送信電力を小さくし受信電界が強い局と通信するものなんでしょうね。
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送信スプリアス『特性
下側にある55dB程度のスプリアスはマイコンとDDS関係のものらしい
高調波は2F=58dB,3F/4F>=80dB
1W以下の送信装置の規格は1mW以下なので1Wとして-30dBで規格内である。
高調波は充分過ぎるくらい規格を満たしている。
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近接スプリアス特性
6MHz辺りにあるスプリアスはDDSのMCLK-FDDS=13MHz
と2XFDDS=14MHzから発生する1MHzがFDDSに重畳して出てくるもの。
キャリアから-47dBである。スペックは-13dBmなので-38dBあれば規格内。
こちらも帯域外スプリアス規格を準用しても-47dBあるので規格を満たしている。
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