「あーいたいた。やっぱりココだったんだ」

バタンッとドアの開く大きな音と共に
弾んだ声が昼寝をしていた俺を目覚めさせた。
ここは英徳高校の非常階段。
そして弾んだ声の主は、今はNYにいる親友の恋人

― 牧野つくし ―





非常階段ランチ




「牧野・・おはよ」

俺はゆっくりと体を起こし、牧野に向かって微笑んだ。
英徳の大学に進んでも、やっぱりここの場所は落ち着く。
広いし、日当たりもいいし、何よりここにくれば牧野に会える。

「あのね・・もうお昼なんだけど・・」

呆れたように牧野が笑った。
俺のずっと見ていたい笑顔。
その顔が見れればそれでいい。
俺にとって牧野は、俺自身の一部のようなものだから。

「ねぇ花沢類、お昼まだでしょう?
 お弁当作ってきたの。一緒に食べよう!!」

俺の横に腰を下ろし、布の袋からいくつもの箱を取り出し始めた。
次々とフタを開けて並べていく牧野。
中には、おにぎりやらサンドイッチ、見たことのないおかずが並んでいた。

「これ全部牧野が作ったの?」

「もちろんよっ。頑張っちゃったんだから」

得意気に答える牧野が可愛かった。
でも今回のは、やたらと豪華だな・・・。

「すごいね・・・なんか誕生日みたいな豪華さだね・・・」

まるで他人事のように言う俺に、牧野は呆れながら言った。

「何言ってんの。誕生日じゃない」

「え?」

「ちょっと・・・まさか自分の誕生日を忘れてたとか言わないでしょうね?」

「あぁー、今日俺の誕生日か・・」

「はぁ〜ちょっと大丈夫?」

全くしっかりしてよねと言いながら、牧野はお皿とお箸を渡してくれた。
春風の舞う非常階段で牧野と2人、バースデーランチが始まった。
これはいまいちね・・とか、これは上手く出来た・・・とか
ブツブツ言いながら、どんどん食べていく牧野。
そろそろ喉を詰まらせそうだな・・・・。

ごふっ・・・

ぷっ・・・ほらやっぱり。
笑い出した俺を睨みつけ、いいから食べなさいと牧野が怒った。
俺はおかずをひとつ取って、牧野に聞いた。

「・・これ、何?・・」

「ん?・・ああ、それはエノキのベーコン巻き」

「ふーん、何かイソギンチャクみたいだね・・・」

「・・・その表現、なんか花沢類らしい・・」

「そりゃどうも」

こんな何気ない会話も、牧野となら楽しい。
俺はイソギンチャクをパクリと口に放り込んだ。

「ねぇ、本当に今日が自分の誕生日だって忘れてたの?」

質問してきた牧野も、同じくイソギンチャクを放り込む。

「うん。忘れてた」

「へぇ自分の誕生日を忘れる人って本当にいるのね。
 あたしなら絶対忘れないけど。
 大体、家の人たちは何も言ってくれないわけ?
 『おめでとう』 とかさ・・・」

確かにその疑問は納得できる。
そういえば今朝、使用人たちがソワソワしていたけど
もしかして俺の誕生日だったからなのかな・・・。
でもうちの人間は 『おめでとう』 なんて言わない。
正確には 『言わないでくれ』 とお願いしてある。
まだ牧野と知り合う前、人との関わりを避けていた頃
たかが誕生日にソワソワしている使用人たちが目障りだった。
執事たちがうざったかった・・。
俺は 『俺の誕生日だからといって、特別なことをしないで欲しい』 と言っていた。
それからは、毎年自分の誕生日は知らない間に過ぎていっていた。
総二郎たちもこれと言って、何も言ってこない。
あいつらは俺のことをよく知っている。
だからワザとだったんだろう。

牧野にそう話すと「ふーん、そういう考えもあるんだね」と言って
それ以上話をしてこなかった。




バタンッ

「なんだよー、やっぱりここだったのか」

勢いよくドアが開かれると、馴染みの声が振ってきた。

「おっなんだよ、これ」

あきらがしゃがみながらイソギンチャクを口に運んだ。

「おいおい、2人でランチかよ。
 何で俺らには声が掛かんないわけ?」

総二郎が 「ちぇっ」 と口を尖らせる。
「でも俺らの嗅覚は鋭いんだぜ」 と総二郎が牧野にウィンクを送った。
ほんと・・・こいつらの嗅覚は鋭い。
前にここでランチをしたときも乱入してきたしね。
沢山あるから食べてと牧野が言い、ランチは更に賑やかになった。

「おう、そう言えば今日、類の誕生日だな」

「あぁ、だからこの豪華な弁当か」

総二郎とあきらが言った。
やっぱり・・俺の誕生日覚えてんだ・・・。
きっと今まで言わなかっただけなんだな。


牧野と関わるようになってから、俺も総二郎もあきらも変わった。
もちもん司も。
俺は誕生日を祝ってもらうことに抵抗を感じなくなり
総二郎やあきらは、今まで押さえていた言葉を自然と口にするようになった。
司に至っては・・・野獣の勘がさらに鋭くなったかな・・・?
きっと・・そろそろ来るはずだよ。
野獣の勘はとんでもないくらい研ぎ澄まされているからね。

ぷっ・・・と笑い出した瞬間、俺のポケットから電子音が聞こえてきた。

RRRR・・・RRRR・・・RRRR

ほらね、きたっ!!

ポケットから携帯を取り出し、表示された名前を確認する。
 ― 司 ―
俺は携帯を牧野に差し出した。
「何?」 と首をかしげる牧野に 「司から」 と告げると慌てて

「いっ・・いいよっ!! 花沢類に掛かってきたんだから自分で出なよ。
 あたしはいいっ、いいっ!!」

「・・・もう通話になってるけど・・・」

「げっ!!!」

電話口からは、すでに司の怒鳴った声が聞こえていた。
牧野は携帯を受け取ると 「煩い」 とか 「いいでしょ」 とか・・
司に負けないくらい怒鳴っていた。
まったく・・・面白いくらいお似合いだよ。
その様子を総二郎とあきらが茶化して遊んでいた。

NYにいる司と、総二郎とあきら、そして牧野。
不思議な空気に包まれながら、俺の誕生日は過ぎていく。
うん。こんな誕生日も悪くないかも知れない。
爽やかな春風は、午後になって更に軽やかに駆け抜けていく。


お腹もいっぱいになったことだし・・・
そろそろ寝むくなってきたな。
俺はゴロンと横になった。

そして、

牧野の怒ってるのに
どこか嬉しそうな声を聞きながら
俺は午後の眠りへと落ちて行った。




―― Fin ――



類ーーーー(*´∀`*)
 誕生日おめでとう゜+。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。+
類の誕生日に気づいたのが昨日・・(汗)
慌てて書き上げました。 ←おいっ
でも、愛は十分に詰まっております。

急遽、書き上げましたので、司のスケジュールが合わず
今回は電話での参加となりました(笑)
類視点で書くのは・・・難しい・・。_| ̄|○
でもいいの。愛があれば(〃▽〃)ポッ