シュルシュルと、すっかり慣れた手つきでネクタイを締める。

この数週間で幾度となく締めたソレは

これから先、きっと俺のライフスタイルの一部となって行くのだろう。



昨日プロムに着ていったスーツに袖を通し

目の前の鏡に己の姿を映し出す。



俺は今日 ――――――――――

                  N.Yへと旅立つ













    message













「 4年後いい男になって帰って来たら ――――――――
  あたしがあんたを幸せにしてあげてもいいよ! 」


昨日受けた、愛しい女からの宣戦布告。

瞳に涙を浮かべながら、それでも堂々と言い放ったあいつは

その後、自ら俺の胸に飛び込んできた。

あの時ほどあいつを愛おしいと思ったことはない。

あいつを抱きかかえ、今日の午後、東の空に浮かび上がるメッセージの事を伝えた俺。

あいつは一体どんな顔をしてそれを見上げるのだろうか。

確認出来ないことが少し悔しい。









あの後 ――――――――――

こんなくだらないパティーはご免だと言わんばかりに、プロムの会場から姿を消した俺たち。

総二郎の行きつけのBarで時間の許す限り飲み明かした。

気の合った仲間たちと最愛の女。

それは、翌日N.Yへと旅立つ俺の至福のひととき ―――――





本当はあいつをN.Yへ連れて行きたかった。

N.Yへ連れて行って一緒に暮らしたかった。

もう ・・・・ 一瞬たりとも離れたくなかった ―――――

だが わかってる ・・・・・

あいつの対等でいたいと言う想い。

俺に守られるだけの女じゃなく、自分の足で、自分の力で生きたいと願う想い。

それでも ―――――――――― 

昔の俺ならどんな手を使ってでも、強引に連れて行ったかも知れない。

いや ・・・・ そんなことをしたら、あいつは間違いなく俺から離れるだろうが ・・・・

それでもきっと ――――― 昔なら手段を選ばなかったはずだ。

だが今の俺は違う。

あいつに出逢って、あいつに惚れて ・・・・ 俺の人生は大きく変わった。

色を持たなかった灰色の人生。

そこに驚くほど鮮やかな色彩で色をつけた女 ―――― 牧野つくし。

俺はおまえに出逢えて良かったと、今、心からそう思える。









今も尚、スーツから微かに香るあいつの残り香

この腕にあいつを抱きしめてから、まだ数時間しか経っていないというのに ・・・・

こんなにも懐かしく、遠い昔のことのように思えるのは俺の心が弱いからだろうか?

それとも、それだけおまえを愛しているということか?





タイムリミットを向かえ1人店を後にした俺を、息を切らせて追いかけてきた牧野。

壊れてしまいそうな程の力であいつを抱きしめた。

このまま俺の中に閉じ込めて、俺の一部になってしまえばいい。

そんなガラにもねーことを思ったのは生まれて初めてだったんだぜ?

おまえはどうだ?

このまま溶けて俺の一部になりたいとは思わなかったか?

俺はあの時のことを一生忘れない。

あの時のおまえの言葉を、おまえの潤んだ瞳を、きっと永遠に忘れないだろう。









  『 なぁ、牧野 』

  『 ・・・・なに? 』

  『 俺のこと・・・ 名前で呼んでくんねえか? 』

  『 ///// げっ!! やっ・・・嫌だよ! ///// 』

  『 やっ嫌だとか言うな!//// 頼む。
    1回だけでいいから名前で ・・・・ 頑張って来いって言ってくれ 』

  『 ////////// ・・・・ 』

  『 やっぱだめか? 』

  『 だっ だめ ・・・ じゃない ・・・ けど////// 』

  『 まっマジ?/////// 』

  『 つっ ・・・・  つかさ//// 』

  『 おう ・・・ 』

  『 つかさ頑張って ////// あたしも ・・・ あたしも頑張るから。
    待ってる ・・・・・ ずっと。 つかさのこと待ってるから //////// 』

  『 ・・・・・・・・・ 』

  『 ???   どうみょ ――――― 』

  『 ・・・・・ すっげー 嬉しい 』

  『 わっ! くっ苦しい! 』

  『 頑張るわ、俺。 サンキューな ・・・ つっ ・・ つくし/////// 』

  『 ////つっ?!   ・・・・ うん////// 頑張れ、つかさ! 』










鏡に映る俺の顔が みるみる赤くなる

 ・・・・・・・ やべーな ///// 

こんな ―――― ちょっと思い出したぐれーで顔に出るなんて ・・・・

総二郎にポーカーフェイスを教わっとくべきだったか?


   『 つかさ ・・・・ 』


あいつの声が俺の耳の奥でこだまする

これからの4年間、俺はこの声を頼りに、この記憶を活力に

おまえにいい男と認めさせる為に必死になるだろう。

バカバカしいと思っていたことに必死に取り組む俺の姿、おまえも直接見れなくて寂しいだろ?

そう思わないか? つくし ・・・・・・・ 





―――――――――― って、そうだ! つくしだっ!!



自分の中であいつのことを つくし と呼んでハッとした。

そうだ、そうだ 『 つくし 』 にすりゃ良かったんだ!!

思い立ったら即行動と言わんばかりに、慌てて電話を手にした俺。

今日の午後、東の空へと浮かび上がるメッセージを変更すべく、依頼した会社にTelを入れた。





「 おう、俺だ! ―――― あ? どちら様?じゃねぇ! 俺だ、道明寺 司だ! 」


電話に出た女に一喝。

慌てる様子の女を無視して一方的に用件を告げる。
 

「 おい、今日の午後頼んだメッセージ、ありゃ中止だ!
  代わりに違うメッセージにしてくれ。 内容は ―――――――― 」


―――――――――― コンコンッ


内容を告げようとしたのと同時に部屋のドアが開いた。


「 司様。ジェットの用意が整いました 」

「 おう、今行く 」


電話を耳に当てながら用意していた荷物を使用人に渡し、そのまま部屋を後にした。

あいつのために ――――― 今日の午後、東の空を見上げる愛しい女の為に

俺はそのメッセージのスペルを告げる。




「 いいか? 一度しか言わねえから、ちゃんとメモれよ?
  L ・ O ・ V ・ E   T ・ S ・ U ・ K ・ O ・ S ・ H ・ I だ。
  今日の午後、東の空にだぞ? わかったな! 間違ったら許さねぇぞ! 」


そう言って一方的に電話を一切った。

最初のメッセージは  Love Makino だった。

だが名前で呼び合った今 ”牧野 ” なんて、よそよそしいよな?

Love Tsukushi やっぱ、これだろう /////


「 あの 司様 ・・・・ 」

「 わかってる! 今行くって言ってんだろ!」


そう怒鳴って、電話を横にいた使用人に投げ渡した。

あいつの照れながらも喜ぶ顔を思い浮かべながら滑走路へと急ぐ。

俺はあいつの声を、あいつは俺の送ったメッセージを胸に、これからの4年間を過ごすだろう


「 じゃあな ・・・・ つくし。 行って来る 」


東の空を見上げながらそう小さく呟いた。

綺麗に晴れわたったその空には、あいつのバカみたいに大笑いした顔が見えた気がして ・・・・・

ふっ と目を細めながら ――――――――――

俺はジェットへと乗り込んだ。





























あのまま ・・・・ 道明寺が帰った後も、あたし達は同じ店で飲み続けた。

主役のいなくなった空間は思いのほか重たくて ――――――――――

それでも誰一人として帰ろうとはしなかった。

あたしが寂しさを感じないように ・・・・・ きっと皆が気を使ってくれたんだろう。

ホント ・・・・・ あたしの周りは凄い人たちばかりだ。

そして店が閉まった後は、どういう訳か花沢類の家へなだれ込み ・・・





よく晴れた午後

もうこの同じ地に 道明寺あいつはいない ――――――――――

そして ・・・・ 昨日あいつに言われた通り、東の空を見上げるあたし。





   ・・・・・ ――――――― ・・・・・ ちょっと ・・・・・





「 ・・・・ スペルが違うんだよ。 ” つこし ” ってなによ・・・・ あほが 」



呆れながらも、道明寺らしいメッセージに思わず胸が熱くなった。

それでも涙は見せまいと、笑いながら空を睨む。

4年後 ・・・・・ あいつにこの事実を伝えるまでは ・・・・












「牧野ー、お茶入った」

「はぁーい、今行く」










      〜〜〜 Love   tsukoshi 〜〜〜









それは、慌てた司からのメッセージ ――――――――――

だったのかも知れない ・・・・・











〜 fin 〜


 




※もともとWeb拍手に載せていたお話なので、あとがきも拍手用のままになっています。

※ あとがき ※

最後までお読み下さり、ありがとうございました。
また、これによって拍手を10回も送って下さったことになります。
本当にありがとうございます。

司の残した「Tsukoshi」 のスペル ・・・・
私の頭の中では、こんな妄想に仕上がりました。(*´∀`*)テヘッ
きっと司は「喜び照れるつくし」を想像していたんだろうに・・・・
「U」を「O」に間違えたばっかりに、感動どころか呆れられる始末(汗)
別の意味で胸に残っちゃったね、司♪ ( ̄∀ ̄*)イヒッ

こんな くだらない話でホントすいません。
また是非サイトの方にも遊びにきていただけると嬉しいです。
宜しくお願い致します♪

しげる



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