綺麗な満月の夜。
俺は久しぶりに恋人と会う。
「今日は連絡もらえて嬉しかったよ」
「あきらくん・・・・」
「久しぶりだよね。雅子さんと会うの♪ 旦那さん平気なの?」
そう。 この雅子さんは人妻。
年上が好みの俺には 付き合うならもってこいの相手。
どうせ将来は親の決めた相手と結婚しなくちゃなんねーんだし
だったら後腐れのないような女と付き合いたい。
そう思うのは――――――――――
別に特別なことじゃないだろ?
full moon
〜あきら物語〜
「あきらくん・・・その旦那の事なんだげと・・・」
雅子さんの表情が曇る。
「なっ何? ・・・・まさか俺のことがバレたとか?」
正直 ちょっと引く。
前にも付き合ってた人妻の旦那に 追い掛け回されたことがあったし・・・
人妻は好きだが 面倒なことはご免だ。
「違うの・・・・バレてはないんだけど」
「あっそう・・・良かった」
「私たち・・・・もう終わりにしましょう」
「・・・・えっ?」
「旦那の転勤でイタリアに行くことになったの。だからもうあきらくんとは会えないわ」
「・・・・・・・・」
あぁ・・・・・・そういうこと。
別に・・・・・しょうがないんじゃん?
人妻だって分かってて付き合ってたわけだし 旦那を捨てて俺と・・・なんて言われても正直困る。
いつかは終わる関係だと承知の上で付き合ってるんだ。
全然不思議なことじゃない――――――――――。
「そっかー。旦那 出世したんだね。おめでとう♪」
「あきらくん・・・・」
「じゃ 雅子さんとは今日でお別れだね。今まで楽しかったよ」
「・・・・・・・・」
「・・・雅子さんほどの人なら・・・ 向こうに行ったら 口説かれまくりだな きっと♪」
「いやだ・・そんなこと・・・・///」
「あんまし悪いやつに引っ掛かったらダメだよ? 特に俺みたいのにはね♪」
自分を持ち上げられて 嫌な気持ちになる女は少ない。
そして 俺自身を落とすことで その効果はより大きなものとなる。
俺の・・・・最後の気遣い。
「じゃ俺行くよ。旦那にも宜しくって・・・・・言える訳ないか」
俺は じゃっ!と片手をあげてニッコリ微笑んだ後 雅子さんに背を向けて歩き出す。
雅子さんは何か言っていたけど 俺は振り向くことも立ち止まることもなく その場を後にした。
――――――――――こんな風にして
俺の恋は いつも幕を閉じる。
別に悲観的になってるわけじゃない。
――――――――――でも
やっぱりどこか虚しい。
報われない恋。
そういえば――――――――――
報われないのは なにも恋だけじゃない。
恋愛以外にも 俺の行動は報われないことが多い。
例えば知る人ぞ知る 花の4人組・F4。
F4の中でも圧倒的な財力と存在感を誇る 道明寺司。
茶道界の若きプリンスであり F4の中で一番の遊び人でもある 西門総二郎。
他人に対して興味を示さず いつでもマイペースで掴みどころのない 花沢類。
そして――――――――――
F4の中で もっとも目立たない存在の・・・・・俺。
司ほどの財力があるわけでもなく 総二郎のように複数の女と付き合うことも出来ない。
ましてや類みたいに 他人に無関心にもなれない・・・・・。
これと言って あいつらみたいに突出するものは・・・・・ない。
背だって一番低いしな。
それでも 他のパンピーから見れば 俺は雲の上の存在なわけだけど・・・
いつもあいつらと つるんでるせいか それも感じられない。
F4の中での 俺の存在意義といえば――――――――――
それは・・・・・・・
――――― あいつらのお守役・・・か? ――――――
・・・・・・・・・・・
あっ・・・ありえねぇ!!
司のお守は 牧野が現れてからだいぶ落ち着いたが
それでも・・・
何で俺が毎度毎度あいつらのお守をしなくちゃなんねーんだ!
・・・・・・・・・
っと嘆いたところで それは紛れもない事実。
そして俺が面倒みてやったところで それが報われることは―――――少ない。
まあ別に俺も感謝されたくってやってるわけじゃねーが
あいつらは あまりにも自分勝手すぎる。
唯一の救いと言えば――――――――――
以前 牧野に言われたあの言葉。
『F3が太陽にたとえると 美作さんは月って感じだよね』
『決して前に出てこないけど ―――― 美作さんがいないとあの3人バラバラじゃん』
『いやんなること多いけど 頼られるってすごい事だよね』
そう言われたあの時は 確か綺麗な三日月の夜だった。
そういえばあの時も女と別れたばっかりで 尚且つあいつらのお守にイライラして・・・・
何となく公園で月を眺めていたとき 偶然会った牧野にあっさりと
『美作さんは月みたい』
だと言われたんだったっけか?
あいつらといるとことで 必然的にお守役となる俺。
それまでも度々 そんな自分の位置に嫌気がさすことがあったが
この時 牧野に言われた言葉に――――――――――
――――――――――正直 俺は救われた。
それと同時に その時はっきりと分かったことがある。
俺に合う女は――――――――――
牧野みたいな女。
――――――――――俺を
満月にしてくれる女だということを。
牧野が司の女じゃなかったら――――――――――
奪っていたかも知れない。
でもそれは――――――――――
俺が俺じゃなくなることを意味する。
ちゃんとブレーキのかかった俺を――――――
俺自身が
少し好きになれた瞬間だった。
RRRRR・・・ RRRRR・・・・ RRRRR・・・・・
ひとり寂しく夜道を歩く俺のジャケットから 携帯の音がする。
誰だ・・・? 総二郎か?
今は何となく 浮ついた気分にはなれねーんだが・・・・・
そう思いながらも 携帯を取り出した俺。
こんなところも俺らしいなと 苦笑いしながら通話ボタンを押す。
「もしも・・・・・・」
「あきらくぅーーーーーーーーんっ♪」
――――――――――ズルッ!!!!
おっ・・・お袋?!
俺が『もしもし』という前に 思いっきり甘えた声で俺の名を呼ぶ。
・・・・・・・・お袋しかいない・・・。
「・・・・なんだよ」
「あのねぇ どうしても一緒に見てもらいたいものがあるの♪
今日 何時ころ帰ってくるぅーーーー?」
「・・・・・・・・・・」
「もしもーーーし! あきらくぅーーん?」
「・・・・・・今・・・帰り道。もうすく着くよ・・・」
・・・・・まったく・・・・
あいつらだけでも大変なのに お袋のことまで面倒みろってか・・・・
・・・・はぁ〜〜
大きな溜息を吐きながらも・・・・・
それでも俺の足はちゃんと家へと向かっていた。
――――――――――カチャ
「・・・・ただいまー」
バタ バタ バタッ――――――――――バターン!
派手な足音と 勢いよく開かれる扉。
「おかえりなさぁーい♪ 待ってたのよーーーーー♪」
「・・・・・・・・・・・」
フリフリのドレスを身にまとい まるでメルヘンの世界から抜け出てきたようなお袋。
まったく 母親には見えねぇ・・・・・。
「あぁ・・・見てもらいたいものって何?」
「えーっとねぇ 今週パパが帰ってくるんだけど
どの服にしたらいいか あきらくんにも選んでもらいたくって♪ うふっ」
・・・・・・・・・・・・・・・
マジかよ・・・・?! その為だけに俺に帰ってこいと?
はぁ〜〜 頭いて・・・・・・・
「なに〜?あきらくんダメなの?」
「・・・・・・いや別に・・・・どれ?」
「きゃーー嬉しい♪ こっちにあるの!きてきて♪」
・・・・・・・・・・・
引きづられるように お袋に連れて行かれた俺が
やっと解放されたのは 帰宅してから1時間が経過したあとだった。
「ふぅ〜やれやれ。あんなフリフリの服・・・俺の好みも何もあるかってーの!」
自分の部屋へと戻る途中 思わず本音が声にでる。
大体・・・・俺が選んだって 親父に見せるためだろ?!
アホくさくって やってらんねぇ・・・・・・・・
「「お兄ちゃまーーーーーー♪」」
「うおっ!!」
――――――――――ドスッ!!
体当たりで突っ込んでくる妹2人。
・・・・・・なんだよ・・・今度はおまえらか・・・・。
「見て見てーお兄ぃちゃまー。これ絵夢が書いたのー♪」
「こっちは芽夢が書いたのよーーーーー♪」
何やら2人とも画用紙を手に持って 俺に見せようと背伸びする。
「これね・・・お兄ぃちゃまなのーーー♪」
「こっちもよーー。芽夢のほうが上手でしょーーー♪」
「あらいやだ! 絵夢の方が上手よ!」
「芽夢の方が上手だもん!」
「どこが?! どう見ても絵夢の方が上だもんね」
ギャーギャーと騒ぎ出す2人。
確かに妹に慕われるのは嬉しいが ここまで来ると正直面倒臭い。
それでも俺はいつもの通り 公平に2人を評価する。
「どれどれ・・・・。2人とも見せてみな」
――――――――!!!
なんだっ?!
こっ・・・・これは・・・・人・・か?
宇宙人にくらいしか見えねーんだけど・・・・。
「・・・・ふっ・・2人とも互角ってとこだな・・」
「「 えーーー なんでーーー 」」
何でもかんでもねぇ! 俺はこんな顔じゃねぇぞ。
――――――――――ん?
俺だという人物像の周りには 幼児の絵らしく花やら草やらメルヘンな家が書いてある。
それはわかるんだが――――――――――
この上にある黄色の丸は何だ?
それも どっちの画用紙にも書いてある。
「絵夢 芽夢 この丸いのは何だ?」
「「どれ?」」
「これだよ これ」
「あーそれね」
「それはねー」
「「満月!!」」
・・・・・・・・・・・・・
「・・・・はぁ?」
「満月に決まってるじゃないの! ねー芽夢♪」
「ねー 絵夢♪」
「なんで・・・だ? 普通は太陽とか書かねー?」
そうだ・・・・普通 幼児の書く絵って言ったら だいたい太陽だろ?
ましてや周りには花や草があって・・・・・雲も書いてるのに
―――――――何で月なんだよ?
「だってぇー お兄ぃちゃまのイメージは月なんだもん♪」
「「 ねーー♪♪ 」」
「・・・・・月・・・・・」
「うん!! 静かで優しい月の光!!
絵夢にとってはお兄ぃちゃまはそういうイメージなんだけど・・・」
「あら?! 芽夢だって同じよ!」
「ふーん そうなの? マネしないでよね」
「違うもん!! 芽夢からみれば満ちたり欠けたり・・・神秘的なの!お兄ぃちゃまは!!」
・・・・・・ギャアギャア・・・ギャアギャア・・・・
「あーー わかった! わかった!! そうか俺のイメージは月か!」
「「うんっ!!」」
「・・・・・そうか・・・・。さっもう遅いから2人とも寝な。
今回の絵は・・・・絵夢も芽夢も・・・・・同じくらい上手だったよ」
「「わーい♪ お兄ぃちゃま ありがとう♪ おやすみなさぁーい」」
「あぁ お休み・・・・」
バタバタとお袋にそっくりな走り方で 去っていく妹たち。
・・・・・・・・・・・・・
俺が・・・・・月・・・・・か・・。
何だか不思議な感覚だ。
牧野にも「月」だと言われ 今度は妹たちにまで・・・。
この分じゃ お袋もきっとそう言うだろう。
俺は部屋へは戻らずに テラスへと向かう。
ガラス張りの扉を開け 外へと出た。
夜空を見上げると そこには――――――――――
さっき見たのと同じ
――――――――――綺麗で優しい光を放つ満月。
――――――――――もしかしたら俺は
俺のことを "月" だという女を――――――――――
そういう女を――――――――――
どこかで求めているのかも知れない。
――――――――――いつか
逢えるだろうか・・・・・・・
俺のことを満月のようだと・・・・
――――――――――あるいは
俺のことを 満月にしてくれる女が
現れるのだろうか。
・・・・・・・・・・・
なんて・・・・・俺もかなりメルヘンチックか?
こりゃ お袋のこと言えた義理じゃねーな。
でももし・・・・・・・・
本当にそんな女がいるのなら――――――――――
いつか
出逢ってみたい――――――――――。
俺をfull moonにするやつに。
〜 Fin 〜
※あとがき※
どうもー、しげるです。最後までお読み下さりありがとうございました。
このお話は50000HITの御礼に書いた作品です。
今まで「あきら」単独のお話がなかったので、書いてみました。
ちょっとしっぽり系で書いてみましたが・・・・・これって・・・早い話があきらの失恋話?(汗)
はっはっはっ・・・・なんでそんな話になっちゃったんでしょうか・・・。
まあ、あきらには哀愁漂う雰囲気がお似合いってことで!
そして双子の妹の芽夢ちゃん・・・・幼児で月の満ち欠けを語るとは・・・・いやはやあっぱれ英才教育(笑)
将来・・あきらにも素敵な女性が現れる日が来ることを望みます!!頑張れ!あきら!!