「 ・・・・で? 結局そのひと言が決めてだったってわけか? 」
はぁと溜息を吐きながら 背後から総二郎が俺の肩に手を置いた
「 別にそういうわけじゃねぇ 」
振り向きざまにその手を払う
「 でも、結局はそこがターニングポイントだったわけだろ?
しかしまぁ何というか、牧野の鉄パンと司の我満がこんな形で役に立つなん ・・・ ってぇ!」
ニタニタした顔でそう言いながら近寄ってきたあきらには無言でパンチを一発
おまえらが てっ ・・・・ 鉄パンとか言うんじゃねー /////
あかい糸
act.43
あの女が帰った後
今回のことでいろいろ迷惑をかけた詫びを入れようと あきらの部屋へとやってきた俺
あいつらに迎えられながら 事の次第を簡単に説明しつつ部屋の奥へと進んで行くと
西田に言って用意させたフルコースの食事は 手付かずの状態でテーブルにセットされたままだった
それを目にして思ったこと
こいつらも ・・・・ それだけ心配していたと言うことか?
ったく ・・・・・ ガラにもねーことしやがって ・・・ もったいねえじゃんか
そう思う一方で それでもやっぱこいつらには感謝しなきゃなんねえと思ったのも事実
だからこそ 恥を忍んで例の件を包み隠さず話してるっつーのに
やれ 俺の我慢がどうだとか 牧野の鉄パンが役に立つとか ・・・・ おまえら2人 調子に乗り過ぎなんだよ!
意識しているわけでもないのに 俺の額には勝手に青筋が浮かぶ
「 つっつかさ ・・・ 落ち着け 」
あきらを起こしながらの総二郎は 完全に顔が引きつっていて ・・・・・
・・・・ っつか 落ち着けるわけねーだろうがっ! 俺にとっては恥を覚悟の告白だったんだぞ?!
「 まあ何でもいいじゃん。 とりあえず決着はついたんでしょ? 」
俺の背後に届く声
振り返ると 壁に寄りかかったままの類がこちらを向いて微笑んでいた
・・・・・・・・・・・・・
「 おう ・・・・・ まあな/// 」
ばかばかしいっ こいつら相手にキレてもしょうがねーのは自分でも解ってる
こいつらはこいつらで マジメに心配してくれてたってのは事実
何よりそれは 冷め切った料理の数々が証明してくれていた
結局あの後 ――――――――――
俺が童貞だったということがそんなにショックだったのか
表情を凍り付かせた女は そのままフリーズした状態で俺の話を一方的に聞く羽目になった
牧野に渡した偽造写真のこと
W.I.Hの診断書を調べたこと
女の本当の相手 すなわち子供の父親を探しだそうとしたこと
そして ―――――――――― 中村が話したこと
中村の名が出てきたときのあの女の表情 ・・・・・・
きっと それでも何か言い訳めいたことを言うつもりだったのかも知れないが
さすがに中村本人が部屋に入ってきたときには観念した様子で
あいつの顔を悲しそうな瞳でみながら静かに微笑んだかと思うと
次の瞬間にはガクリと肩を落とした
そして中村が現れたことにより 女はここにいる理由すら失ったのだろう
突然立ち上がったかと思うと ドアの方へと歩き出したんだが ――――――
『 おい! 待て 』
俺の声に ドアの前でビクンッと体を跳ねさせた女が恐る恐る振り返る
俺自身も女を引き止めた自分に驚いていた
だが ――――――――――
あそこで女を帰らせる訳にはいかなかったんだ
「 で、なに? その後 司くんはご丁寧に彼女の相談にまで乗ってあげたってわけ ・・・? 」
「 相談じゃねえ! 話を聞いてやっただけだ 」
振り返り 呆れた表情の総二郎を睨む
「 あのなぁ ・・・ そういうのを相談に乗るって言うんだよ。
っつーかさ、別にそのまま帰してやるだけでも十分だったんじゃね?
あんな小細工するような女に同情するなんて、司も変わったよなー 」
・・・・・ 確かに ・・・・ あきらの言う事には一理ある
今までの俺だったらありえないことだ
だがあれは ・・・・ 同情とはちょっと違う気がする
「 別にそんなんじゃねぇよ。 ただ ・・・ 」
「「 ただ? 」」
・・・・・・・ だから 何でおまえらはそんなにハモるんだよっ!
「 ただ ・・・ 牧野に言われたんだ 」
「 牧野? 」
その名前に類が反応する
「 あぁ。 金持ちはみんな何かに縛られてるって。
あの女も ・・・・ 天王寺もそうなんじゃないかってよ。
妊娠が本当だとしたら、そのことを話してるときの天王寺 はすごく嬉しそうだったんだと。
もしかしたら何か理由があるのかも知れないから、ちゃんと最後まで聞いてやれってさ。
・・・・・ ほんっと、呆れた女だよな。
自分を陥れようとした相手に対して 普通そんな風に思えるかよ ・・・・ 」
っとにバカな女
だが そのバカな女の言葉を受け 天王寺の話を聞く気になった俺はもっとバカか?
そんなことを思いながらふっと小さく笑う
「 ふーん ・・・ 何か牧野らしいじゃん 」
そう言いながら類がソファにドサッと座り込んだ
「 まあな。 牧野らしいっちゃ、らしいよな 」
「 そうそう。 まあ、司が惚れるくらいだからな♪ 呆れた女じゃなきゃ務まんねーよ 」
総二郎とあきらも笑いながらソファへと腰を下ろす
「 で、結局は何だったの? 」
類が興味深々と言った感じで首を傾げた
「 あぁ。 何かそれこそ俺には全く理解できねーんだけどよ ・・・ 」
――― 嘘 ―――
自分で言っておきながら 頭の中でもう1人の俺が否定する
全く理解できないなんて嘘
昔の俺ならいざ知らず 今の俺なら多少は理解できるはずだ
今思えば ――――――――――
その理由 を一番知りたがっていたのは
俺だったのかも知れないと
そんな思いが脳裏を掠めた
→ next
novelへ戻る