夜の暗闇に瞬くフラッシュ




目の前がチカチカして何も見えない




ドアマンが正面玄関の扉を開け 俺が表へと1歩踏み出したと同時に




そのフラッシュは 更に激しさを増して焚かれた




冷たい風に晒されたのも束の間 ――――――――――




あっという間に報道陣に囲まれた俺は 外気さえも感じないほど




報道陣たちの熱気の渦に呑み込まれていった









あかい糸
act.32















  ―――― 『 Mr.Domyoji! Is the news of the  marriage true? 』 ――――
          (道明寺氏! 結婚の報道は本当ですか?)




  ―――― 『 Please teach two beginning of love 』 ――――
          (お2人の馴れ初めを教えて下さい)




  ―――― 『 About marriage, how does own seem? 』 ――――
          (ご結婚について、ご自身はどう思われますか?)




  ―――― 『 Mr. Domyoji! A partner becomes pregnant and is true? 』 ――――
          (道明寺氏! お相手の方が妊娠というのは本当ですか?)






外に出た途端 あっという間に報道陣に囲まれた俺




激しく焚かれるフラッシュと ものすごい勢いで詰め寄ってくるリポーターたち ――――




ある程度のことは予想していたが ・・・ 正直ここまでとは思ってもみなかった




西田の 『 たった2人 』 と言った言葉は 今思えば当然のことだったのかもしれない




そのたった2人のSPは 俺を守るため




揉みくちゃにされながらも必死になってリポーターを制している




だがこの様子なら ――――――――――




俺の予想通り 生放送で中継しているところも少なくはないだろう




N.Yの空港は あちらこちらにテレビが設置されている




今のこの映像が中継されていれば 必ず空港にも流れるはずだ




頼む! 間に合ってくれ!!




あとは牧野 ―――― おまえがテレビを観ることを願うしかない




俺は祈るような気持ちで大きく息を吸い込み 腹の底から声を出した




「結婚は!! ―――――――――― 」




しかも英語ではなく あえて日本語で ・・・・ 牧野に伝わらなくちゃ 意味がない




俺のまさかの発言に 今まで騒いでいた報道陣が一斉に口を噤(つぐ)んだ




もう一度大きく息を吸い込み 今度は静かに落ち着いて言葉を選ぶ




「結婚は ―――――――――― 誤報です」




ざわめく報道陣 ・・・ またも激しくフラッシュが焚かれた




「天王寺 薫さんとの結婚はありません。
 また、彼女が妊娠しているという噂が出ておりますが
 正直申しまして、私にはそのような覚えがございません。
 この件に関しましては、只今 確認を取っている最中です。
 非常にナイーブな問題ですし、あまり先走った報道は控えていただきたい。
 それに ――――――――――   」




ここで一呼吸




「それに、私には既に将来をともにしたいと考える女性がおります」




そう言うと 一気に辺りがどよめいた。




何やら発狂めいた声が聞こえる中 目を閉じて息を深く吸い込む




冷たく湿った空気が肺の奥に達したのを確認し目を開けると




どこを見るでもなく ただ遠くを ――――― 景色の向こうに牧野の姿を重ねて叫んだ




「牧野!! そこを動くんじゃねえ!!」




俺の突然の怒鳴り声に ビックリして動きの止まる報道陣たち




「今から行くから ・・・・ そこで待ってろ!」




そう言って、改めて報道陣の方へ顔を向ける






「I’m sorry. I perform the interview some other time again. Give me it through here.」
    (すいません。会見はまた改めて行います。ここを通して下さい)






それだけ言って前へ進むと




呆気にとられた報道陣はいとも簡単にSP2人に押し退けられていった














目の前に横付けされた車に乗り込んだ俺




空港へ向かう途中で西田からの連絡を受けた




あいつの乗る飛行機は5番ゲート 




車を降りて走っても ギリギリ間に合うか間に合わないか ―――――




あいつは ・・・・・・ さっきの中継を観ただろうか




そして 待っていてくれるだろうか




この俺を ・・・・・・














―――――――――― バタンッ




車が停車し SPがドアを開けるまでもなく 俺自身 自らドアを開け飛び降りた




5番ゲートへと直走る




牧野 ・・・・・  




まきの ・・・・・・ 頼む! そこに居てくれ!




間に合って ――――――――――




―――――――――― カツンッ ・・・・・




「 牧野 !!! 」











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